第4話 なんだこいつ!?
「薫ちゃん?女の子?」
「ううん、中学3年になる男の子よ」
「そうなんだ・・・」
ハマは最初の生徒は女子だったら話しやすいと思ったので、男子だと聞いて少し身構えた。ハマ自身、中学時代に男子とよくケンカしたことがあったからだ。
しかし、教師になると決めた以上、どんな生徒にも接しなければならない。ハマは薫についてもう少し聞いてみようと思った。
「どんな子なの?」
「中学2年生の1学期から、素行のよくないお友達とつるむようになって、授業についていけなくなったそうよ」
ハマは出鼻をくじかれた気がした。覚悟を決めたものの、もし不良だったらどうしよう、怖くないかな、などと再び身構えてしまった。
そんなハマの様子を察してか、母は付け加えた。
「薫ちゃんはね、別に乱暴な子じゃないらしいわよ。もともとは素直で真面目な子だったんだって。今はつるんでいた子たちとは交友もなくて、ただ英語と数学を基礎から見てほしいらしいわ」
「ふうん・・・」
ハマはしばし考え込んだ。悪い子じゃないんだ。でも、中学の英語と数学って、どんな内容だったっけ。あとで教科書をみてみよう。
そんなことを考えていると、
「今、帰ったぞ」
父が居間に上がり込んできた。
ハマは一瞬ためらったが、正座をして父を迎えた。
「父さん、ありがとう」
父はすぐに何のことか気付いたようだが、
「あぁ」
とだけ言って自室に向かった。
「父さん、ハマを応援してるのよ」
母は笑いながらつぶやいた。
父さん、母さん、ありがとう。私、一生懸命やるよ!
ハマは薫の最初の授業までに、中学校の英語と数学を念入りに復習した。これで何を聞かれても答えられる、そんな自信を持って薫を迎えた。
そして最初の授業の日。
「ガラガラガラ」
塾の引き戸が開き、中学生らしい男子が立っている。
「こんにちは!」
ハマは笑顔で大きな声で挨拶した。
「薫君、だね」
しかし、薫は小さくうなずくだけだった。
ハマは少し面食らったが、構わずに続けた。
「今日から授業が始まるけど、何か困ったことはある?」
薫は黙ったまま、質問には答えずに席に座った。
「(なんだこいつ!?やりづらい!)」
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