2.恋愛作戦編
Mission13 (今更)ライバル登場!?
そこから我が家で過ごすあと1日は、とても優雅なものでしたわ。
ティータイムを楽しんだり、お勧めの図書を紹介したり、談笑に談笑を重ねましたわ。ああ、とても良い時間でしたわ……。
「いえ、お嬢様、そのほとんどは顔を背けていらっしゃったではないですか」
「い……いいいいいいえ、そんなことはなくってよ」
「言葉から震えが隠しきれていませんよ……」
きちんと謝罪を済ませ、すっかりいつも通り……いえ、前より更に距離が近くなったメイドと、そんな会話を重ねます。学校へ向かうための衣服を着用し、メイドに髪を
「せっかく今日は音宮様とご登校なさることが出来るんですから、私たちが居なくても頑張ってくださいね、お嬢様」
「わっ、分かってますわよ!
「お嬢様……ご立派になられて……」
「心がこもっていなくってよ!!!!」
差し出された鞄を引っ
「氷室さん! おはよう」
「おっ! ……おはよう、ございます……」
「それで……こんな立派な車に俺まで乗せてもらっちゃって……大丈夫なの? 俺、すごい心配なんだけど……」
「もっ、問題ありませんわっ。そもそも、こちらの不手際で先輩はこちらにいらしているのですから。最後まで世話は致します」
「そっか……」
……それより、少し離れてほしいものですわ……朝から心臓が保ちそうにありません……。
数々のメイドに見送られつつ、
『お嬢様、あまりうかうかしていますと、ぽっと出の女性に持っていかれたりしますからね』
余計なお世話ですわ、と、
「あれ、音宮くん、登校の仕方変えたん?」
「あ、おはよー、副会長」
「…………………………」
明け星学園の校門の前まで辿り着き、降りて早々、そんな風に声を掛けられました。その声には、聞き覚えがあります。……音宮先輩も言っていたように、そこにいたのは、生徒会副会長。
両手を深紅色のパーカーのポケットに突っ込み、飄々とした態度で、そこに立っています。
……整った顔立ち、ぱっちりとした大きな瞳、人の信頼を集めそうな笑顔、女性特有の2つの膨らみ、ショートパンツから覗く白く細い脚……。
やはりこの方、女性でしたのね……いえ、それより……。
「文那ちゃん~っ、おはよっ!」
「なっ……なんですの!? おはようございます!!」
「抵抗はしつつも挨拶は返してくれるんだねぇ……あははっ、面白い子~!!」
「……馬鹿にしていますの?」
そして
「ご、ごめん氷室さん、こいつ、こういうやつなんだよ」
「……こいつ……?」
その馴れ馴れしいまでの口調に、余計に
……
そう思いつつ、彼女の方に目を向けると。
「……ふぅん?」
彼女の目が、すぅ、と細まります。それはまるで、「面白いものみーつけた」、と言わんばかりの……。
しまった、と思った時には、後の祭りでした。
「……ねぇ、音宮くん」
「え? 何?」
副会長に肩を掴まれた音宮先輩は、そのまま彼女に顔を近づけます。そして副会長は……なんと、
なっ……何なんですの!? この女……!!
「……分かった。でも、そんな重要でもないことをわざわざ耳打ちした理由は……?」
「まあまあ、詳しいことはいーじゃんっ、ほら、レッツゴー!! ……あっ、文那ちゃん、まったねー☆」
「あ、氷室さん、それじゃあ、また」
そう言うと、2人は仲睦まじく隣を歩き、去って行ってしまいました。
一方、取り残された
……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
心の中で盛大な悲鳴をあげ、メイドの『お嬢様、あまりうかうかしていますと、ぽっと出の女性に持っていかれたりしますからね』という言葉が、今更ながら染みるのでした。
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