Mission6 改善案の提案
「……参考になるよ。そういう真っ直ぐな意見、あんまり聞かないから……」
「……え?」
……ど、どうして……。
「氷室さん、改善案とかある? ぜひ聞きたいんだ」
「え、ええ。もちろんありましてよ。まずは……」
音宮先輩に聞かれるまま、
長時間空を見上げ続けるのは疲れるので、寝転ぶことの出来るスペースを設けたらどうか。
春であるとはいえ、夜は少し冷えるので、何か体が温まるアイテム、または軽食などを用意したらどうか。
望遠鏡だけでなく、星座早見盤などを用意し、望遠鏡の待ち時間の体感長さを短縮するような手段を考えたらどうか。
それから──……。
一通り、
彼はペンを手で回しつつ、一度大きく頷いて。
「ありがとう! この観察会、来てくれる人が年々減っていってるみたいで……何か改善して、復活を計らないとって話になってたんだ。これ以上減るようなら、観察会は廃止、っていう話も出てたくらいで」
「そ、そうでしたの……」
「でも、貴重な意見をこうしてもらえて良かった! 次の会議で提出してみようと思う。本当にありがとう!」
「っ!」
満面の笑みで感謝の意を伝えられ、思わず
「べ、別に……それほど礼を言われるようなことは、していませんわ。誰にだって思いつくような改善点でしょう」
「そんなことないと思うけどな。誰にでも思いつくなら、もうとっくに改善はされてるだろうし」
「そ、そうかもしれませんが……」
「だから、素直に感謝の気持ちを受け取ってほしいな」
一度、少しだけ、視線を音宮先輩に戻します。……彼は
……わ、
「……分かりましたわ。受け取っておきます……」
「……うん」
彼は笑いました。本当によく笑う人です。決して、ものすごく顔がいい、というわけではありませんが……とてもお人柄が良さそうな顔をしていらっしゃいます。なんというか……
「氷室さん、この後は帰るだけかな?」
「は、はい。電話をすれば、家から迎えが来るので……」
「そっか、じゃあ、校門まで一緒に帰らない?」
「は、はいっ!? 一体なんと!?」
「……あ、ごめん……俺となんかじゃ、嫌だよね」
「い、いえ、そういうわけでは……!!」
はやる心臓を手で抑えます。ま、まさかこの方、
「この学校、学内で異能力者の誘拐がたまにあったりするらしくて……。それに、氷室さんは名家のご令嬢でしょ? 何かあったらって、心配だったから」
「あ、ああ、そういう……」
「?」
音宮先輩は首を傾げていらっしゃっています。いえ、何でもありませんわ……。
……勘違いも甚だしいですわね……
そしてこれは、チャンスですわ! 夜に男女が2人っきり……!! 何も無いなど、そうは問屋が卸しませんわ!
……
ですから校門まで向かう間、出来れば校内で、何かしらアクションを起こさなければ!
「……そこまで言われてしまえば、断る方が失礼ですわね。先輩に校門までの護衛をお願いしますわ」
「うん、まあ副会長が見回ってくれてるみたいだし、俺の出番はそこまで無さそうだけど」
……あの方があそこにいたのは、校内を巡回していたから……ということかしら? 先輩の言葉で、
変な人ではありましたが、この学校、ひいては生徒たちのことを考えていらしてますのね。
「それじゃ、俺はここの清掃をもう少ししたいから……氷室さん、そこの椅子に座って待っていてくれる? 5分くらいで終わると思うから」
「了解致しましたわ」
5分で終わるのでしたら、もう家の方に連絡してしまってもいいでしょう。
迎えを寄越してください、と電話はせず、メールにて連絡を済ますと同時、眠気が
ホームに戻ると、表示されている時刻は午後11時48分。……もうすぐ日付を回りますわね……確かに校内であるとはいえ、こんな時間に1人は危険だったかもしれませ……。
「……~♪」
目の前からそんな歌声が聴こえ、
声の主は。もう聞かなくても分かります。音宮先輩でした。掃除をしつつ、上機嫌に歌っています。
「Twinkle, twinkle, little star~……How I wonder what you are~……♪」
英語版のきらきら星を歌っています。……ああ、そうか、星空観察会の……後だから……。
……彼が前にしている……窓からも……見えます……きっと一等星だけ、ですが……きらきら、輝く、美しい……星が……。
彼の歌声が、
……だ、め。ねちゃ、う……。
──……。
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