アンラッキー7
秋谷りんこ
アンラッキー7
今日は、知人の紹介で知り合った女性と、初めて二人きりで食事の予定だ。おしゃれなレストランを予約して、気合は十分。素敵な人だから、楽しみだな。僕は朝から浮かれていた。
家を出ると、降水確率ゼロ%のはずが駅までの道で土砂降り。まいったな、と思いながら駅へ駆け込むとホームで滑ってすってんころりん。痛え~。どうにか会社に着いたら大事なプレゼンの資料を忘れていて慌ててコピー。なんとか間に合って挑んだのに、プレゼン中に停電になってスライド全部見えず。まじかよ~と思いながらも終わらせ、ほっとコーヒーブレイク、と思ったらコーヒーメーカーが壊れてコーヒーが噴出しワイシャツがびしゃびしゃ。着替えようと思ったらロッカーに指はさむ。最悪だわ~と思いつつ着替えてオフィスに戻ろうとしたら廊下で同僚にぶつかってコーヒーぶっかけられる。さすがに二枚も着替えがないから午後はコーヒー臭いシャツで過ごして、さすがにそのままデートには行けないから早めに仕事を切り上げて一度家に戻ったから、僕は結局、食事の約束に1時間も遅れてしまった。
お店に入った僕に気付いて彼女は手をあげる。
「遅れてしまってすみません!」
「大丈夫ですよ」
ああ、なんて優しいんだ。
僕は、言い訳になってしまうが、今日の自分に降りかかったいくつもの不運を彼女に話した。
「まあ、それは大変でしたね。不運が7つも重なるなんて、ラッキー7ならぬ、アンラッキー7だわ」
そういって微笑む彼女は、天使のように可憐だ。こんな素敵な女性と知り合えたなんて、今日の不運7つはすべて帳消しになるかもしれない。そうしないと、幸と不幸のバランスがとれない。僕はそう思って、彼女との出会いに感謝することにした。
一通り食事がすむと、彼女はおもむろに話し出した。
「ところで、不運が重なるときに良い壺があるんですけど」
ああ……
今日は、アンラッキー8か……
アンラッキー7 秋谷りんこ @RinkoAkiya
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