青い鳥はそばにいた?

浅葱

男女の友情は変わらないものなのか否か【完結】

「ナナ、飲みすぎ」

「るっさい! 飲まなきゃやってらんないっつーの!」

 いいなと思った会社の先輩は、指輪を外していた既婚者だった。

「……何がラッキーセブンよ。全然ラッキーなんてないわー……」

 久しぶりに会った大学の時の友人の前で、私は酔いつぶれたみたいだった。


 うちの親は占いとか大好きで、雑誌の星座占いとかを見ては一喜一憂する人だった。縁起担ぎとかもすっごく好き。

 私の名前の由来はラッキーセブンで「七(なな)」

 せめて別の漢字をあててくれればよかったのにと、今でも恨んでいる。

 何がラッキーセブンだ。

 高校の時は友人と同じ人を好きになった。お互いに抜け駆けはなしよ、なんて言ってたのに、彼女は私が知らない間に告ってまんまと彼をゲットした。

 女子の友情なんて信じられないと思った私の、大学での友人は男が主だった。おかげで媚を売ってるとか、いろいろ噂されていたらしい。同じゼミの女子がそんなことを言っていた。つーか、そういう噂話を本人に伝えるって性格悪くない? 相手にしなかったら引っかかれた。

 私の友人の一人がその女子の好きな人だったらしい。そんなの知らないよ。

 で、どうにか就職して今度は会社の先輩といいかんじになったのだけど。

「あの人、新入社員食うのが大好きな既婚者だから気を付けてね」

 会社の飲み会で他の社員にそう教えられ、頭の中が真っ白になった。

 本人に後日聞いたら本当にそうだったみたい。

「ごめん。冗談のつもりだったんだけど本気にした?」

 そう言って逃げていった男を蹴り飛ばしてやりたかった。

 ねんごろにならなくてよかったけど、私の心はズタズタだ。


「何がラッキーセブンよ。こんなのアンラッキーセブンじゃない……」

「……俺にとってはラッキーかな。そんな会社辞めちゃえよ」

「そんなわけには……」

「いつまで鈍感なんだかなぁ」

 額にちゅと口づけられて、優しいなってぼんやり思った。そしてそれは唇にも下りてきて……。

 なんか夢を見ていた気がする。

 夢の中で私は誰かに優しくあやされていた。あの声は……。

「気分は?」

 目は覚めたけど、ぼーっとしていた。声をかけられてはっとする。

 なんで友人が私の顔を覗き込んでいるのだろう。もしかして私は倒れてしまったのだろうか。

「……あ、え……?」

 声が掠れていた。

「昨夜のこと、覚えてないのか?」

 そう苦笑した友人は、なんというか今まで見たことがない顔をしていた。

 友人は男なのだけど、私の前では男じゃなくて、一緒にふざけて遊んだりする仲間で。

 あれ?

「……覚えてない」

「じゃあ思い出させてやるよ」

 そう言った友人は”男”の顔をしていた。

「え? うそ……」

「嘘でも夢でもないから、俺にしとけ」

 抱きしめられて気づいた、自分が裸だとか、これは無害な友人ではなかったのかとか。裏切られた? とか考えたのだけど、女として見られていないと思っていたのは私だけだったらしい。

 友人として付き合いやすかったのは確かだ。それは男女の関係には発展していなかっただけみたいで。


 その後会社は辞めなかったけど、ラッキーセブンも悪くないと思えるようになったのだった。



おしまい。


流され系鈍感女子が好きなんです!(言い方

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青い鳥はそばにいた? 浅葱 @asagi

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