不幸体質・薄幸少女

亜未田久志

切なる想いを込めて


 私、絹宮幸子きぬみやさちこは不幸だ。

 いつも私がイベントに参加する日は雨だったり電車が遅延したりイベントそのものが中止になったりする。

 いつもそうだ。

 私はお祭りには参加出来ない。

 今年の文化祭もそう。

 だから私はその日、学校を休む事にした。

 そしたら私の家のチャイムを誰かが鳴らした。

 お母さんが対応する。

 と。

「幸子~あなたにお客さんよ~」

「誰~?」

「恵介くんですって」

「げ」

 自称、クラスのお祭り男こと利刀恵介りとうけいすけくん。

 文化祭の実行委員長だ。

「よっ、絹宮、お前も来ないと文化祭になんないだろ」

「……私が、私が行くと、みんな不幸になる、し」

「なんだよそれ」

 私は恵介くんに事情を説明した。

 懇切丁寧にこれこれこういう理由だから私は行けないんだと。

 だがしかし。

「理由になんねえ!」

「なんでよ」

「俺が納得してねぇからだ!」

「もう帰って……」

「今回で七十七回目の文化祭なんだってよ、すごいよな」

「七なんて不幸な数字よ」

 恵介くんは私の目を見据えた。

「俺が変える、お前のアンラッキー7をラッキー7に変えてやる。それこそフライがホームランになるくらいの追い風で」

「なにそれ」

 私は少しだけ、ほんの少しだけ笑顔になった。

「そんなに行きたくないなら、ここで文化祭をしよう」

「え?」

「クラスのみんなここに呼ぼう」

「ちょっ」

「善は急げだ! 早速グループチャットに連絡!」

 私が止める暇も無く、メッセージを送ってしまう恵介くん。

 するとどうだ、怒涛の通知音。

「どうだ、これがお祭り男の力だ」

「もう、うちをどうするつもりよ」

 その日の夕方、思い思いの荷物を持ったクラスメイトが全員。

 私の家の前に集った。

「えーでは! これより第七十七回西高後夜祭を行う! 代表者! 絹宮幸子さん! 挨拶をどうぞ!」

「えっえっえっ」

「ほらなんでもいいから」

「えと、あの、その、集まってくれてありがとう~!」

 久しぶりに大声を出して声がかすれた。

 でも届いた。

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不幸体質・薄幸少女 亜未田久志 @abky-6102

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