【KAC】7777777

斜偲泳(ななしの えい)

第1話

「七瀬さんどうしたの? さっきからパソコン睨んでソワソワしてるけど」

「今日は金曜だろ? 毎週恒例のアレだよ」

「あぁ、トト7。まだ諦めてないんだ」

「しぃっ、声がデカいっての!」


 二人の同僚が七瀬の顔色を伺った。


 トト7とは数字選択式宝くじの一種で、0~9までの数字を七桁選んで行う。


 数字の重複はありなので組み合わせは10の7乗である一千万通りだ。


 七瀬は若い頃からこのトト7に入れ込んでおり、定年が近い今日まで毎週欠かさず購入していた。


 だがその結果は平均と比べても大きく負け込んでいる。


 なぜか?


 それは彼が毎度馬鹿みたいに7777777という数字を選ぶからである。


 最初はラッキーセブンと七瀬という苗字にちなんでシャレで賭けていた。


 だが、周りにそんな数字は絶対出ないと言われる内に意地になり、今では完全に引っ込みがつかなくなっていた。


(頼む。一度でいい。俺に7777777を当てさせてくれ!)


 七瀬は必死だった。


 もはや当選金などどうでもいい。


 七瀬を知る者は皆口を揃えて言う。


 あれじゃあラッキー7じゃなくてアンラッキー7だと。


 悔しいがその通りだ。


 だからこそ7777777を当てたい。


 そして今まで自分を笑ってきた連中を見返したい。


 さもなく悔しくて悔しくて死んでも死にきれないというものだ。


(……さて、時間か)


 ゴクリと喉を鳴らし、七瀬は震える手で当選発表のページを開いた。


 その結果は――


 †


「……あの様子じゃ今回もだめだったみたいだな」


 パソコンの前でがっくりと肩を落とす七瀬を見て同僚の一人が呟いた。


「七瀬さん、そんなに落ち込まないで下さいよ。また次がありますって!」


 同僚が肩を叩くと、七瀬の身体がぐらりと椅子から転げ落ちた。


 七瀬は死んでいた。


 茫然とする同僚が顔をあげると、ディスプレイにはラッキーセブンが七つ並んでいた。


  その後の調査で、死因は過度な興奮による脳溢血だと判明した。

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