何もないはず

005

　うちの大学、ロッカーが異様に少ないのね。

　学生の数より断然少なくってさ――他のとこもそうなのかな？　毎年四月に抽選するんだよね。今年ロッカー使えるかどうかっていうくじ引き。四年間一度も当たらずに卒業してった人も結構いるって、それくらい少ないの。

　で、ロッカーって全部にそれぞれ三桁の番号がついてるんだけど、007番のロッカーだけずっと空いてるのね。

　いや、本当に空きなんだって。実は大学の事務室にうちの従姉が勤めててさ。その従姉が、007番の鍵だけどこにも貸してないって言うんだもん。それでなくても、007番が使われてるとこ見たことないって皆が言ってるし。有名だから見られてんだよね、そこ。

　なんか、そこ使うと悪いことが起こるらしいの。

　007番を割り当てられた学生が、事故とか病気とかで退学したり、ひどいと自殺とか――そういうことがあって、それで永久欠番になってるんだって。

　いや、変な話だとは思うけど。でも何かあるんだよね、実際。

　実は私、005番のロッカー使ってるの。ロッカーって細長いのが上下に重なってて、上が奇数で下が偶数でさ。

　だから私のロッカー、007番のすぐ隣なのね。

　でさ、007番って時々揺れるの。ゴトゴトゴトッて、中で重たいものが動いてるような音がして――本当だって！　揺れるんだよ。ちゃんと震動があるの。

　やっぱ中に何か入ってんじゃないかって？　うん、何か入ってるのかなって私も思ったんだけどさ。でも何にも入ってないはずだって従姉は言うし。

　でもさ。

　ロッカー使ってると、たまに「うえ～ん」って声がするの。

　赤ちゃんがぐずぐず泣くときみたいな声。そんなのいるわけないんだけどね、大学に。

　ああ、なんかやだな。ロッカー、あった方が断然便利なんだけどね？　でも巻き添え食いそうじゃん。近くにいると。

　そういえば008番使ってた子、同じ専攻なんだけど最近見ないな。

　やだなぁ。