大切な話があると告げた俺。気合が入っていたものの、アンラッキーすぎる出来事が起こってしまった件

さばりん

ホームラン宣言して告白すると決めたら……

 俺の名前は案落暉アンラッキー

 野球部に所属している、名前がめちゃくちゃ変わっただけのただの高校生。


春子はるこ。今日は来てくれてありがとう」

「こちらこそ、招待してくれてありがとう。試合楽しみにしてるね」


 俺は今日、クラスメイトの春子ちゃんを試合に誘っていた。

 そして、とある決意を固めていた。


「あのさ、春子ちゃん」

「ん、何?」

「今日、俺がもしホームランを打ったら……大切は話があるんだ」

「えっ……」


 俺の決意の言葉に、何かを察したのか、春子ちゃんは頬を軽く染めてコクリと頷いた。


「それじゃあ、試合行ってくる」

「うん、頑張ってね」


 春子ちゃんに見送られながら、俺は球場の中へと戻っていく。

 ホームランを絶対に打つという気概を持って。

 そして迎えた試合。

 俺は七番キャッチャーでの出場だ。

 二回、二死ランナー1塁の場面で打席が回ってくる。


「七番、キャッチャー。案君」


 俺は審判に一礼して、バッターボックスに入る。

 バットを構えると同時に、相手ピッチャーが早速ボールを投げてくる。

 緩いカーブボールの軌道を読み、俺は思い切り振りかぶる。

 しかし、バットをかすめたボールは内野スタンドへと入っていきファールボール。


 大きく息を一つついて、俺はもう一度バットを構える。

 今度は、直球ストレートのボールを投げ入れてきたので、俺は再びバッドを振りかぶった。

 だが、少しだけ振るタイミングが遅くて、ボールはバッドに当たり後ろへと飛んでいきファールボール。


 その後、カウント2、3まで行った六球目。

 相手のピッチャーがストレートのボールをど真ん中に投げ入れてくる。

 チャンスと見て、俺は思い切りよく振りかぶる。

 しかし、ボールは無情にも内野スタンドへ。

 さらに運悪いことに、ボールは春子ちゃん方面へと一直線。

 春子ちゃんの座る近くの椅子に激突して、鈍い音が鳴り響く。


 危ない、危ない。

 危うく告白どころの騒ぎではなくなってしまう所だった。

 肝を冷やした俺は、一つ深呼吸をして再びバッターボックスに立つ。

 そして、迎えた七球目。

 相手ピッチャーのボールはすっぽ抜け、俺を強襲してくる。

 慌ててボールを避けようとしたものの、ボールは俺の息子にクリーンヒット。


「ぐはっ……」


 強烈な痛みが伴い、俺はそのままその場へへたり込んでしまう。

 苦悶の票表情を浮かべながら、自身の息子を抑えることしか出来ない。


「いでぇ……いでぇよ……」

「おい、案大丈夫か? 誰か、裏手に運んでやれ」


 俺はそのままチームメートの肩を借りて、ロッカー裏へと向かって行く。

 膀胱はめちゃくちゃ腫れてしまい、すぐさま病院へ行く羽目に。

 なんというか、デッドボールで退場とか、恥ずかしすぎて春子ちゃんに合わせる目がない。

 春子ちゃんにバレぬよう病院へ向かおうとしたのだが、結局見つかって事情を説明する羽目に。

 労わってくれたけど、余計に惨めな気持ちにさせられてしまった。

 こうして、案落暉のアンラッキーな7球勝負は幕を閉じるのであった。



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大切な話があると告げた俺。気合が入っていたものの、アンラッキーすぎる出来事が起こってしまった件 さばりん @c_sabarin

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