バッドラック・バット・ラック。

透々実生

バッドラック・バット・ラック。


人の運は結果論だ。


🤞


 金で運は買えない、という言葉がある。

 それは運が抽象的で不確定で、商品価値として不定形だからという意味ではない。運には確かに商品価値がある。

 では何故「買えない」のか?

 答えは単純で、「から」だ。単純な経済原則曰く、売買の本質は所有権の移転である。しかし、運を自分の物として所有している者など居ない。従ってそもそも売る事ができないし、裏を返せば運を買う事ができない――と、こういう論理な訳である。


 

 人は今や、運を金で売り買いする事ができる様になっていた。誰もが何かの運を所有し、そしてその所有権を移動する事で、日銭を稼いだり大金を稼いだりする。


 俺もまた、その運の売人の1人。

 但し、一際変わった運を売っている持っている――。


🤞


「運を、売ってくれない?」

 ある朝、俺の下にやって来たのは少女だった。

 肌も服も薄汚れていて、髪も脂で照っている。元の顔からして美少女なのだろうが、こうも汚れを被ってしまっていては折角の美貌も活かせないというものだ。

 ……こうした身なりをした人間が、俺に運を求める理由は大体限られていて、そういう輩にはすっかり辟易していた。

 俺から買ったところで、痛い目を見るだけだと言うのに。

 だが、俺は止める理由が無い。止められる手段もない。この手の人間は、何を言っても聞かないからだと俺は知っている。

「別に良いが……差し支えなければ理由は?」

 ……そら来た。

 俺の運を買えば、自らの命を絶てると思っている。そういう奴らはいつも同じ。

 絶望と不安とで煮凝にこごった、どす黒い目をしている。

「噂になっているわ、『不運の売人アンラッキーセブン』。貴方は、を所有し、あまつさえそれを売っている。しかも押し売りでは無くて、寧ろ売って欲しいと押し掛けられている、って――」

 そしてその先はいつも同じ。

 ――何故そんな不運が売れるのか?

 それは、と買う者が望むからだ。

 では何故望むのか?

 彼らが自殺したいからだ。

 この世は、或る科学者のお蔭で運が計算式化され、『事象変革確率』という仰々しい名前が付けられた。この技術を応用し俺の国では、生まれた時に所有する運の質と量が決められる。『運制御機構ラック・ルール・デバイス』を手に埋め込まれ、慎重な吟味の末、勝手に埋め込まれる運を決められる。

 慎重な吟味。そう、幸運な者もいれば不安な者もいるかの如く――世界の運の総量が決まっているかの如く。

 従って、この時決められた運に恵まれなければ不遇な人生を送り続けるという事でもあり、一定数そういう者達がいる。

 勿論、一生不運という訳ではない。運は売買が可能だ。しかし、中途半端な不運は二束三文であるのに対し、幸運は値千金という有様。普通に考えて、不運な者が幸運など手が届く筈もない。

 だから不運な人は、幸運を買えるまではいつまでたっても不運なまま。彼らは満足に生活を送れず、笑顔で毎日を過ごすことができない。鬱屈とした日々を送り続ければ、いずれ精神を病む。遂には――生きたいと思わなくなる。


 以上から、俺の所に不運を買いに来る。

 俺の不運は確かに。外を歩く事すらできない程の不運である。だから、最悪なアン777ラッキーを一早く引いてこの世界から身を引こうと、不運を分け与えて貰おうというのである。

 ……というところで最近量産されまくっている噂話は纏まる。お後がよろしいようで。

 少女はこの話を、寸分違わず、その噂の中心人物である俺に話し切った。

「……そうでしょ、噂通りなら」

「ああ、噂通りどころか、事実だ」

 俺の知る限りでは、確かに全員結果として、自殺を遂げる事ができている。新聞記事ではここ連日、壮絶な死に方をしていると紙面を賑わしていた――しかも全員、俺から不運を買った者達。

 でなければ、こんな噂は実体を持って世間を渡り歩かない。

「で、幾らで売ってくれるの」

 少女の問いに即答する。

 これから死ぬってのに、金など要らぬ筈だ。正しく『宵越えの銭は持たず』というやつだ。人生の暗い暗い夜を越えることなく、お前らは死ぬのだから。

 少女は迷わず首肯した。迷っているなら俺は此処で客を突き返す。本気で死ぬ気もないのに最強の不運を渡しても、本当に不幸になるだけだから。


 少しでも生きたい気持ちが残っているのなら――俺の話を聞く余裕が少しでもあるなら、生きて足掻いて幸せを掴むべきだ。

 そうでなければ、俺から言う事は何も無い。


 互いの財布機器ウォレットデバイスを突き合わせ、少女の全財産を俺に移行する。結構な入金額を確認したところで、俺は送信準備を終えて手を出した。少女もまた受信準備を終えて俺の手を握る。

 瞬間、手に埋め込まれた『運制御機構ラック・ルール・デバイス』を伝い、俺の不運の一部が少女の下へと流れ込む。少女は不運が流れ込んでいるような感覚に身震いしていた。

 数秒して、移行が終わったので俺は手を離す。

「これで取引は終わりだ――さあ、早く行け」

 少女はぺこりと礼をして、そそくさとその場から去って行った。

 さて、改めて入金額を確認するか――俺が財布機器ウォレットデバイスを起動した途端、警報音が鳴る。

 舌打ちをして確認すると、デバイスがハッキングされてほとんど全ての金を持って行かれていた。このデバイスはセキュリティが万全で、ハッキングなど殆ど起きた事も無いのに。

「……本当、運がねえなあ」

 俺は先の少女を早速思い出す。

 自殺したい少女。確かに彼女は渇望した自殺を見事遂げるだろう。連日新聞を賑わせる人達の様に。

 良いなあ、と羨む。

 俺の方こそ、この世からとっとと消えてしまいたいのに。こんな不運を持って生きようなんて、普通は誰でも思わない。


 しかし、俺は。

 


🤞


 どうして、と少女――女々々かしまし女々めめは狼狽えた。

 何をどうやっても、からだった。

「あの売人、私を騙したの……っ!?」

 然し、運が一層悪くなっているというのもまた、客観的事実だった。

 証拠に、金が無い筈なのに無銭飲食者と間違えられて、店主からリンチを受けていた所だ。もう少しで死ねるという所まで殴られた所で、店主の配偶者が出て来て必死に止めてくれたお蔭で、死ぬことは出来なかった。

 顔がただ腫れただけ。最悪な気分だった。これを不運と呼ばずして何と呼ぶのだろう?

「……何で、死ねないの」

 その後は、兎に角自殺を沢山試みた。下手な自殺も数ありゃ当たると信じて。

 手近なトラックで撥ね飛ばされようと思った。然しトラックの方が横転し、爆発炎上を起こした。少女は火傷したがやはり死ねなかった。

 今度はその炎に身を投げ込んで死のうと思った。しかし、偶々近くにいた消防隊員に身柄を押さえられ、火元から離れさせられた。

 意気消沈したまま、服毒自殺でもしようと思ったが、毒を買う金すらない。

 家にあるロープで首を吊ろうとしたら、そのロープが直ぐに切れて失敗してしまった。

「何で、何で!」

 台所にあった筈の包丁もどこかへ消えていた。鋏すらない。

 電気も繋がっていないしガスも使えない。

 一体こんな状況で、どうやって死ねというのだろうか?

「……はあ」

 女々はもう疲れてしまった。

 自宅に帰った彼女は、まだ昼前だというのに、そのままベッドに横たわって眠りに落ちた。


🤞


 目が覚める。相変わらず生きている。

 猛烈な顔の痛さがより生を実感させてくれる。あの店主め、無茶苦茶に殴ってくれやがって――と思いつつも、どうしようもないと女々はあてどなく散歩することにした。

 とても天気の良い夕暮れ。朝から自殺しようとして失敗し、そして疲れて眠って尚生きている少女を嘲笑うかの如き、気持ちの良い黄昏。

 一体どうしたら死ねるんだろう。

 一刻も早く死にたいというのに――。

 心も体も疲労困憊になってしまった女々は、通りすがりの公園のベンチで座る。西日が暖かく顔に差し込み、顔の腫れを刺激する様だった。

 溜息を吐く。お金も無い、なのに死ねない。

 

 何と無しに呟いた言葉で、女々の頭の中に突如閃光が走る。


 不幸、そうか――


 あの男の不運は、のだ――言うなれば、自らの望んだ事が全て叶わなくなる程に。

 今の女々で言うならば、。漸く彼女はそれに気付いて、更に落胆した。

 考えが甘いとしか言いようが無い。不運とは、自分にとって悪いことが起こる状態だと思った。だから最強の不運とは、自分にとって最悪なことが起こる――命を失いかねない事態が起こる状態だと、勝手に思っていた。

 否。真の最強の不運とは、自分の思った通りに何も行かなくなるということだ。

 これでは自殺ができないじゃないか。何で私はそんなものに、全財産と全人生をなげうってしまったのか――。


「……」


 いや、待て。

 それなら何故、あの男から不運を買った者達は、

 望んだ筈の自殺ができない程の不運。だが、その不運もどうせ貰い物。貰った運がまで自殺をし続ければ、いつかは自殺ができるのだろうか――?

「あの。もしもし?」

 ――俯いていた女々は、漸く声を掛けられていることに気が付いた。

 顔を上げると、其処にはとても優しそうな老夫婦が、心配そうな顔で覗き込んでいた。

 いえ、何でもないんですと言おうとしたが、それを言うにはあまりにも顔を腫らし過ぎて、上手く口を動かせない。

「あら、大変。顔がそんなに腫れて……あなた、水でタオルを冷やして来て頂戴」

「ああ」

 お爺さんが手拭を受け取って場を離れ、お婆さんは女々の手を握った。

「大丈夫? なんて酷い……誰がこんなことを?」

「いえ、良いんです」

 女々は辛うじて口にし、首を振った。だがお婆さんは譲らない。

「良くありません」

 ぴしゃりと否定して続ける。

「そんな怪我をして、良い筈がないでしょう」

「でも、ホントに――」

「婆さん、持って来たよ」

「有難う」

 お爺さんから冷えた手拭を受け取ると、患部を冷やす。痛っ、と一瞬呻いてしまったが、その後はひんやりと心地良かった。熱を帯びた顔の腫れに、良く効く気がする。

「可愛らしい顔なんだから、こんな傷放っておかないの。ね?」

「……」

「それどころかこんなに細っちゃって……ちゃんと食べられてないんじゃないの?」

 お節介だと思いつつも、女々は気付く。思えば今日は死ぬ事で頭が一杯で食事を摂っていなかった。

 摂る必要がなかった。今から死ぬというのにどうして食事など――。

「……、なら、いらっしゃいな。少し食べさせてあげるから」

 女々は、目を丸くした。

「そんなになって、私、貴方の事見捨てられないわ。ねえ、あなた」

「ああ。一度ちゃんと食べた方が良い」

 お爺さんも同意する。お婆さんが、「ほら」と手を差し伸べる。

「……やめた方が良い、と思います」

 お婆さんに、女々は言った。

「私、今、全財産叩いて最強の不運を買ったんです。そんな私と一緒にいたら、あなたたちまで、不幸にしてしまう」

 そう言ったつもりだったが、腫れた顔でどこまではっきり言えただろうか?

 しかし、女々はどうしても口にしたかった。運の支配するこの世界で長らく生きてきた老夫婦――恐らく、幸運に恵まれて生きてきた2人への女々なりの配慮でもあった。

 幸運でなければ、どうして人に優しくする余裕があるだろうか?

 そんな心優しい2人には、このまま何事もなく幸せに生きて欲しい――そう思っていたのだ。

「どうでも良いのよ」

 しかしお婆さんは、女々の配慮を跳ね除けた。そんな事よりも、目の前の貴方を救う方が大事だとでも言いたげに。

「運なんてどうでも良い。私達は、あなたを助けたいのよ、お嬢ちゃん」

 その言葉に、何故かわからないが女々は涙を流す。

 どうしてだろう。こんな、何でもない言葉に、妙に心打たれるなんて――。

 運なんてどうでもいい、か。

 ああ、私、不運だから死のうとしたんだっけな。より強い不運を買ってまで。


 それなのに、こんなに幸運な目に遭って良いのだろうか?


 少女はそう思いながら、ふわりと背中に手を回し抱擁してくるお婆さんの胸を、顔を埋めて濡らす。


🤞


 それから女々は、成り行きで老夫婦の下で暮らすことになった。当然の流れではあった――無一文で仕事にも就いていない少女がこの先生きていくなんて、とても出来るはずがない。

 女々は生活の初めに、自立ができるまでお世話になると自ら条件を付けた。そんなの良いのに、と老夫婦は言ったがそう甘え過ぎてもいられない。

 暖かな歓待と食事に迎えられ、衣食住に不満がなくなり、家事炊事を手伝う内、たった2日程で体力も精神も回復してきた。

 回復すれば、考える余裕が出てくる。女々は疑問を抱いた――全財産叩いて最強の不運を手にしておいて、こんなに順風満帆に事が進むなんて、と。何か、虫が良すぎるんじゃないか、これから更に不幸な事が起こるんじゃないかと。

 しかしそんな疑念も老夫婦と会話をして吹き飛んでしまった。

 幸運に恵まれたと思っていた老夫婦は、どちらも不運を与えられていたと知った、その時に。

 とても不運な人々とは、女々には思えなかった。毎日アクシデントはあるものの何事もないかの様に、笑顔で日々を暮らすその姿に、自分の過去の悩みが馬鹿らしいのではと思い始めた。

「運に左右される事はあるわ」生活を始めて3日目、お婆さんがこう言った。「でも、運に左右された後の出来事でどう対処するかは自分次第。如何に政府から埋め込まれた運があって、その結果順当に格差が出来たとしても、たとえ人生の出来事が歪曲されたとて、これは私達の人生なんだから」

 自分の人生は、自分で決めるものよ。

 お婆さんの言葉で、少なくとも不運を呪う気持ちは少しばかり薄れた気がした。勿論払拭はできないが、思い悩んでいても始まらない、と思える様になった。まだ少女は若いのだ。

 全財産を叩いて最強の不運を買った過去の自分を笑う。なんとお前は無駄な事をしていたのだろうと。


 そして4日、5日、6日と過ごし、普通の日常生活を送る内に、女々は自分が最強の不運を買ったのだという事実を、意識の片隅に追い遣ってしまっていた。


🤞


 7日目。


 結局、1週間も生きてしまったのだ、と女々は思っていた。

 当然、自立には程遠い――が、今日はその第一歩を踏み出す時だった。

 アルバイトに応募したところ、一つだけその応募を受け付けてくれたのだ。場所も此処から程近い。道路を3分歩いて、横断歩道を渡れば直ぐだ。

 運が物を言う世界でも、金が要る。いや、運が金で売買できる様になったからこそ、運が物を言うようになったとも言えるか。

 何にせよ、金さえあれば何かと対処できる。

 無銭飲食と疑われる前に、金を払って穏便に済ませる事だってできた筈だし。

 ――老夫婦に、恩返しだってできる。

 もしアルバイトに受かって仕事をして、お金を手に入れる事が出来たら、老夫婦に何か買ってあげようと思った。自分には、ささやかな物しか買えないだろうけれど、喜んで貰える様に精一杯考えるつもりだ。

 そうこうしているとアルバイト応募先の店が見えた。あとは横断歩道を渡るだけ。

 信号が青になった。

 右を見て、左を見て、右を見て。

 横断歩道を渡る。


 

 有り得ない現象に女々は硬直してしまい、そのまま撥ね飛ばされた。空中を舞いながら、女々は思う。


 ――あれ。

 私、空飛んでる?

 あ、そうか。

 車に撥ね飛ばされたのか。

 結構痛い。

 痛いよ。

 痛い!

 何で!

 折角バイトの応募通って、これから生活が変わるという所だったのに!

 あのお爺さんとお婆さんに、優しくしてあげようと思っていたのに!

 どうして。

 どうして、私にはそんな事すら許されないんだろう。

 ……ああ。

 

 こんな事なら、あの男から不運なんて、買うんじゃなかっ――。


 女々は頭を、店向かいの建物にぶつけた。

 当たり所の、彼女は呆気なく死んでしまった。


 7日目。

 ラッキーセブンの名を冠した日に起きた、最強にアンラッキーな出来事であった。


🤞


 ――やっぱり。

 女々に不運を売った男、男々々たばかり男々おおしは、新聞記事を眺めていた。

『何故? 車が店を突き破る 1、負傷者多数――。』

 死んだ少女の顔写真は、確かにあの時運を売った少女だった。変な名前だな、と思いつつも、インタビューを受ける老夫婦(女々の生活を助けた2人として取り上げられていた)の悲嘆に暮れる叫びが綴られている。

 『何で、この子がこんな目に。こんな不幸な事、あってはならない』という言葉に目を止める。

 不幸。

 結果、女々という少女は最強の不運を引き当ててしまった。その結果、死んでしまった。

 俺から運を買って、丁度7

「やっぱり、皆、7日して死ぬのか……」

 『不運の売人アンラッキーセブン』。いつしか付けられた二つ名を思い返して溜息を吐く。


 最早、罪悪感などなかった。

 浮かぶのは、羨望。

 皆、俺を差し置いて死んでゆく。

 そんな俺は、心だけは死んでいるのかもしれない、と思った。


 足音が聞こえてくる。

 やって来たのは、草臥れたスーツを着て目に隈を作った猫背の男。彼は、弱々しい声で俺にこう言う。

「運を、売ってくれませんか」

 ……。

 またか。

 まあ良い、動機を聞こう。

 俺には、止める理由など無いのだから。




 ……最後にその話とは、なんとまあ。

 この本屋も、別に貴方を虐めたい訳では無いと思うのですがね。気分を害されましたら、代わってお詫びします。

 ……いえ、お礼を言われる事の程では。


 しかし、どうでしょう。

 本当に、運は結末次第だと思いませんか?

 終わり良ければ全て良し、という言葉は半分真実だと思います。過程がどうあれ――たとえ、それが死にたい程の出来事であったとしても、足掻いて藻搔いてゆけばいつかは幸運を手にできるものなのだと、私は思います。

 しかしここには注釈が必要だとも思います――すなわち、「幸運を目指すものとする」という様な。この主人公女々の様に、不運を最初から目指して突っ走る者が、幸運を手にできるはずがないのですから。


 絶望の先は絶望しかないのです。

 希望を見出して掴むのは、他でもない貴方だと、私はそう思います。


 無論、希望は人によって異なります。そんなものは、他人に求めてはなりません。自分の中に価値ある希望を作り上げ、それを自分で信じるのです。

 貴方にしか分からなくたって良いじゃないですか。

 だってこれは、貴方の物語なのですから。

 読んできた本の人々と同じく、貴方は貴方という名前の物語の主人公なのです。


 ……お節介が過ぎましたね。

 鬱病の人に向けてこんな事を言ってはいけないと咎められそうですが……まあ良いでしょう。どうせこのダークウェブくんだりまでやって来て文句を言う輩も居ないでしょうし。


 さあ、もう閉店のお時間です。

 本日はご来店、ありがとうございました。


 二度と、お越しになりませんよう。




KAC20237へ続く。

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