セブンスバレット ~七発目の弾丸と幸運を誇る賞金首~

雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞

第一話 不幸を呼ぶ七発目の銃弾

「ミルクを」


 帽子を目深にかぶり、腰に六連発リボルバー拳銃を吊った女がそんな注文をすると、酒場に笑声が響いた。


「ママが恋しいんでちゅか~?」

「俺の宿に来な、もっといいもん飲ませてやるよ」

「そのデリンジャーはしまえ」


 下卑た会話が飛び交う中、女は帽子を脱ぐ。

 笑い声が止まる。

 彼女の顔には大怪我の跡があったからだ。

 傷の女は訊ねる。


「ラッキー・ジョージを知ってるか?」


 刹那、入り口が吹き飛んだ。

 大男が、爆煙とともに侵入してくる。片手にはマシンガン。


「テメェはラッキーだ。探す手間を俺が省いてやった」


 そして自分はもっとラッキーだと、コインを投げた。


「表」


 足下に落ちたコインは、確かに表だった。


「ひゅー!」


 マシンガンを乱射するジョージ。

 傷の女が、拳銃を抜き打つ。

 銃声は三発。

 しかし、そのどれもが男には当たらない。

 そうである運命のように。


「無駄無駄! 俺はラッキー・ジョージ! 運が向いてる限り」

「無敵なんだろ? そうやって何人殺した?」

「何故覚えている必要が?」

「違いない、ここでアンタは死ぬからな」


 言いながら三発放つがジョージは無傷。

 返礼とばかりに、ジョージは一瞬で女を蜂の巣へと変える。


「終わりかい? あっけないな」

「……七発目の弾丸セブンスバレットの伝説を知ってるか」

「あ?」


 瀕死の女が語る。

 この世には、持ち主の命を吸って放たれる七発目の弾丸があるのだと。

 そして震える手で、ジョージへと拳銃を向けた。

 男は嘲う。

 残弾がゼロだと知っていたからだ。


「だったら運試しをしコインを投げてみろよ、ラッキー・ジョージ!」

「いいぜ、出るのは表だ!」


 高く弾かれるコイン。

 それがジョージの眉間の高さまで落ちたとき。

 銃声が、響いた。


「アンラッキー7――アンタのツキ・・は、ここまでだ」


 コインが床へと落ちる。

 巨漢の男が、ぐらりと倒れた。

 コインには穴が空いていて、裏も表も解らない。

 それを見て瀕死の女は。


 ただ、満足そうに嗤った。

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