KAC20236 アンラッキー7

@wizard-T

オケラ街道を探したい

「兄さんとこの子は元気か、こんどケーキでも」

 ブツッ。


 ああ、着拒してえ。

 ったく、何のつもりだよ真っ昼間から。いくら土曜日とは言えなんてえ無神経なオハナシだ。


「ねえパパ何?」

「何でもないよ」

「もしかしておじさん?」

「あー私ケーキ食べたーい」

 で、子どもたちはすっかり胃袋を掴まれちまってるし。

「おじさんはね、パパみたいにちゃんとお仕事をしてないの。たまたま拾っただけのお金をあげてるだけなの」

 女房はきちんと説明してくれてるが、子どもらはめっちゃ不満げ。俺が欲しいもんを買ってやれねえであいつが買って来るからだろうけど、一緒にすんじゃねえよ。

 同じ四十二であと十五年ローンが残ってる家を買ったリーマンと、家賃二万円のアパートに住んでる無職野郎をよ。




 二卵性とは言え双子のはずなのに、弟は子どもの時から呆れるほどのぐうたら。まともに賃金を得たのは、高卒して始めたバイトの三年間ぐらい。

 そこで悪い先輩に捕まっちまって、後はもう二十年間定職に就かずブラブラ、ブラブラ。そのくせ金寄越せとか言って来ねえでむしろ寄越して来るんだけど、その金の出どころが本当やんなるね。

「この前はどこ行ってたんだよ」

「WINS」


 週末は競馬、平日はパチンコ、それから競輪に競艇まで。


 文字通りのギャンブル依存症。いや、ギャンブル依存生活。


 そんなのを二十年以上繰り返し、もちろん嫁さんなんかもらう気もなし。お袋はまじめに働けってずーっと言ってたけど、まったくの馬耳東風で五年ぐらい前からもう匙を投げちまった。

 だっつーのに

「あの子は何を考えてるんだか、私を悪者にするために……」

 絶縁一歩手前の実家に毎年迷惑料とかって二百万円も仕送りするもんだから放蕩息子、道楽息子であっても親不孝者とは言い切れねえ状態が続いてる。おふくろが言うほどひねくれた話でもねえけどさ、確かに世間体のいい話じゃねえ。

「お前、いくら借金あるんだよ」

「ゼロだよ」

 そんでちょっと問い詰めたらそんな大嘘を吐かれた事もある。バカバカしい、ギャンブル依存症が借金と無縁な訳ねえだろ!本当病院に連れ込んでやりたいわ。

 そう思って親族とか言う事で財務状況を調べてもらった事があるが、結果は大嘘どころか大マジだった。ギャンブラーらしく貯金もゼロかと思いきやむしろ俺よりも多いし、なんなんだよ全く……。




 で、だよ。

 俺が門前払いしたのにも構う事なく上がり込んで来てケーキとゲームソフトを寄越して去って行ったあいつに本格的にお説教してやろうと思って追いかけたら

「兄貴、やるのか?」

 だと。

 ふざけんな。誰がパチンコなんかやるかよ、そんなに散財してえのかって吠えたらわかっていたとは言え視線の冷たいこった。そりゃそうだよね、平日昼間からこんな事やってるのは同じ穴の狢だよな……。


 その挙句

「すげえ、さっそく来たぜ!」

「本当今日も絶好調だよな!」

 たったの三分でスリーセブンが並びやがる……ああ、本当にこいつのラッキーは止まらねえ。俺らがこいつのラッキーだけの人生を止める事もできねえ。


 何がスリーセブンだよ、ああ腹立たしい!!

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