第176話
——それから七時間もの時が流れたが、志鬼は未だに夢の中だった。
あれから帰り道の薬局で熱を冷ますシートや風邪薬、体温計にスポーツドリンクを購入し、家に着くと動こうとする志鬼を制しながらあゆらが布団を敷いた。
とりあえずラフなジャージに着替えだけ済ませてもらうと、あゆらは冷蔵庫の中にあった鮭とチンするご飯に沸かした温かいお茶を合わせ、鮭茶漬けを作ると志鬼に食べさせ、薬を飲ませた。
申し訳なさそうにする志鬼を
当然だ、体温計は39.2度を指していたのだから。
ひどい発汗と浅い呼吸に、なぜすぐに気づいてあげられなかったのだろうと、あゆらは自分を責めた。
そうして志鬼は疲れを癒すように、泥のように眠り続けた。
気づけば時刻は夕方の五時を過ぎていたが、一向に起きる気配がない。
しかし、こんな状態の志鬼を置いて家に帰るなど、あゆらには到底できなかった。
あゆらは志鬼を起こさないよう部屋の端でスマートフォンを手にすると、母に電話をかけた。
「もしもし、お母様」
『あゆら、どうしたの?』
「今日は私……帰れそうにありません、志鬼の家に泊まります」
『……あゆら、あなた、自分が何を言っているのかわかっているわね?』
高校生の少女が同級生の少年と外泊するなど、良家の娘でなくてもただごとではないだろう。
もちろんあゆらも非常識だということに自覚はあり、母が言いたいこともわかっていた。
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