第171話
あゆらが志鬼の身体から下りると、パチパチ……と人を小バカにしたような拍手が聞こえた。
もちろん、しているのは彼しかしない。
「いやあ、すごいね、あゆらさんは立派な猛獣使いだ。僕が怪我をして野間口くんに少年院にでも入ってもらえば二人を引き裂けると思ったんだけどね、失敗失敗……で、そこの猛獣くんは、この事件の真髄まで辿り着いたのかな?」
清志郎が手を叩くのをやめ、志鬼を見据える。すると志鬼はそれに返すように、苦々しい顔をした。
「わあ、その反応はもうすべてを知っているね! いくら極道の息子だからって、親の力がなければただの子供なのに、よくそこまで調べられたものだね、褒めてあげるよ」
あゆらにはなんのことかわからない。
突然蚊帳の外に弾かれたような感覚に、あゆらは困惑し、志鬼と清志郎の顔を交互に見た。
「……黙れ」
「僕から教えてあげようか、あゆらさん、きみと僕はある意味一連托生で、幸蔵さんは」
「黙れ言うてるやろ! 俺から話すからお前は引っ込め!!」
珍しく声を荒げる志鬼に、あゆらは事の重大さを悟った。
清志郎はあきれたように苦笑いをすると、机に用意してあった教科書を手にした。
「じゃあ僕はそろそろ行くよ、体調が悪いと言って授業に遅れると言ってあるからね。そうそう、もうすぐバイオリンのコンテストも近いんだ、ぜひ観に来てね、あゆらさん」
清志郎は淡々と話すと、何事もなかったかのように部屋を出て行った。
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