第156話

 和美から話を聞いてから三日三晩、文字通り考え抜いた翌朝、志鬼はうなされ目を覚ました。

 志鬼は元々眠りが浅いため夢は見がちであるが、昨夜のそれは彼の今の心境を現すように陰鬱なものだった。

 珍しく寝覚めが悪く、身体がひどく重い。

 志鬼は小さく呻き声を漏らしながら、桜の花弁散る腕を伸ばし、布団の傍らに置いていたスマートフォンを持ち上げた。

 そしてその画面に表示されている時刻を見て、目をひん剥いた。


「げえっ……!? 何やってるんや俺は……シャレにならんっ……!」


 ただ今の時刻は午前九時二十分を過ぎたところだった。

 つまり、学校はとっくに始まっている。

 いつも通りアラームをセットしていたはずだが、どうやら無意識に止めて二度寝してしまったようだ。


 この時、志鬼には高熱があった。

 いくら強いとは言え、彼はサイボーグなどではなく、生身の人間だ。出来上がっているように見えても、まだ十六歳の心身ともに未成熟な少年なのである。

 ただでさえ神経を使う深夜の捜査が続き、睡眠時間が少なかった上に三日前の出来事がとどめになり、一気に疲労が出てしまったのである。


「やばい、あゆら大丈夫かな……ああ、連絡来てるやん、早よ行かな」


 それでも志鬼の頭にはあゆらしかない。

 自分がいなければ、あゆらが一人の隙を見て清志郎に何をされるかわからないと思った志鬼は、身体が警鐘けいしょうを鳴らしているのを無視して急いで身支度をすると家を出た。

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