第154話

 かばってもらっておいて、逃げるように転校するなどなんと薄情な。そう思いがちではあるが、もしかしたら何か他に理由があったのかもしれないと、志鬼は視野を広く持ち直した。

 そして、その志鬼の思惑は当たることとなる。

 

 志鬼のたくみな話術と真剣に頼み込む様に、売春クラブにいた少女は和美の連絡先を教えた。

 志鬼はとりあえず一度連絡をした後、すぐにあゆらに相談するつもりだった。

 男性の自分より、女性のあゆらの方が性被害について話すには説得力があり、証言をしてもらえる可能性が高くなると考えたからだ。

 ——だが、事態は思わぬ方向に動くことになる。


 志鬼が電話をかけると、和美は知らない番号からで警戒したのかなかなか出なかった。あきらめずに数回に分けて鳴らすと、ようやく電話口で声がした。

 志鬼はここが勝負どころだと判断し、清志郎が美鈴を殺害したことから今現在に至る経緯をすべて話した。

 すると和美の声が震え、鼻を啜る音が聞こえた。スマートフォン越しでも彼女が悲しみ泣いていることがよく伝わった。


「私が証言します。帝くんがしたこと、知っていること全部、訴えます」


 予想外にも、和美はすぐさま証言をしたいと申し出てくれたのだ。

 軽くコンタクトを取るはずのつもりが、一気に話が進展し、これであゆらにいい報告ができると喜んだ志鬼だったが。その後志鬼は、新たな問題に直面することとなる。

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