第122話

「いや、けど、俺別に慣れてないから、なんとも思ってない女やと平気なだけで、それこそ引くくらい……まあ、うん……」

「そ、そう」

「……しかし、あゆらがヤキモチ妬いてくれるとは思わんかった」

「そこは強調しないでよね!?」

「あゆらが嫌なら潜入捜査の時も、何があっても女に触らんって約束するわ」


 満足げにそんなことを言う志鬼に、あゆらはちょっぴり彼の先行きが心配になった。


「あなた、そんなに私の言いなりになってばかりでいいの?」

「ええ! むしろもっと命令してくれ! あゆらになら緊……束縛されたい!!」

「命令しろって命令する人なかなかいないと思うのだけれど……後、緊縛と束縛ならだいぶ意味が違ってくるわね」


 大きな図体をしてまさかの好きな相手には尽くし体質の志鬼に、あゆらは困ったように優しく微笑みかけた。

 すると徐に志鬼の腕があゆらに伸びてくる。そしてその手がサングラスと帽子を取り上げたかと思うと、すぐ目の前に志鬼の顔が近づいていることに気づいたあゆらは、驚いて咄嗟に目を閉じた。

 

 ——キスされる……!?

 そう思った次の瞬間、あゆらの額に温かいものが触れた。

 すぐに離れてゆく温もりに、様子を窺うようにゆっくり瞼を持ち上げたあゆらの前には、気遣うように穏やかな瞳をした志鬼がいた。


「怖がらんといてな。あゆらが嫌がることは絶対せんから」

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