第121話
「あっ! わ、わかってるわよ、言いたいことは! 私に頼まれてしていることなのに、そんなこと言われてもって感じよね!? わかってるのよ、矛盾しているのは、だから言いにくくて……」
「……それって、ヤキモチ?」
志鬼の指摘に、あゆらは困りながらも観念し認めることにした。
「そう……よね。嫉妬ってこういうことなのね、とてもいい気分とは言えないわ」
それを聞いた志鬼は、はああああ〜〜と、盛大な安堵の息を吐き、
「よかった……嫌われてなかった」
心から安心したように微笑む志鬼に、あゆらは勇気を出して伝えてよかったと思った。
この猛獣は、飼い主にはどこまでも従順なようである。
「拍子抜けしたわ……あのさ、あゆらがああいう店に慣れてないのは当たり前やし、だからうまく切り返しができんのも当たり前やから。むしろおかしいのは俺やし、なんでも堂々とできたらええってもんちゃうで」
「……志鬼は」
「俺は、物心ついた頃から何回もああいうとこ連れて行かれたんや。組継ぐかもしれん男が、ハニートラップにでも引っかかったらあかんやろ。だからある程度女慣れしとけって、いらん世話焼く
と、そこで突然固まった志鬼の顔色がみるみるうちに青くなった。
「……悪い、ちょっとトラウマ的なやつが呼び覚まされそうやったから、この話はここまでで、よい?」
「わ、わかったわ」
よほど嫌な記憶を思い出したのか、悲壮な顔にかわいそうになったあゆらはそれ以上突っ込むのをやめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます