第67話

「ど、どうするのその子!?」

「連れて帰るわ、俺今一人暮らしやし」

「そ、そんな簡単に……」

「あ、でもペット禁止やったかな、まあええわ、飼い主見つかるまでってことで大家さんにお願いしよ」


 なんという決断力。生き物を育てるということを軽んじての行動なら他の方法を探すべきだと思ったが、志鬼なら大丈夫だろうという妙な安心感があったあゆらは止めるのをやめた。


「私の家はドーベルマンが二匹いるから飼えないしね……」

「そりゃ怖いな、俺んとこ来たらええわ、可愛がったるで」


 子猫に顔を舐められ、くすぐったそうにしながらも嬉しそうに笑う志鬼。

 とても極道の血が流れているとは思えない微笑ましい姿に、あゆらは無意識に見惚れていた。


「志鬼って極道っぽくないわ、あなた以外の人を知らないけれど」

「あゆらやってお嬢様らしくないやん。普通俺みたいなんとつるまんで、柄の悪い学校の奴らでも俺の家知ったら一歩引くのに。俺はそれがめっちゃ嬉しいけど」


 素直に喜びを表現する、本当の志鬼を知っているのは自分だけでいいとあゆらは思った。


「あ、そうだわ、これ、目的の」


 先ほどから志鬼ばかり見ていることに気づいたあゆらは、そんな自分を誤魔化すようにポケットにしまっていた名刺を出した。

 すると志鬼は「はいはい、了解」と言いながらそれをあゆらの手からサッと奪うと、スマートフォンのカメラで写真を撮り、探偵に送信した。

 そして流れるように電話をかけると、すぐに相手が出たようだった。

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