第42話
「名前呼んでくれて嬉しいし、俺でええならなんでも聞くで」
そう言って歯を見せて笑う志鬼はどこかあどけなく、あゆらの警戒心という名のもつれた糸を解かしていった。
あゆらは志鬼にすべてを話した。
時折息を詰めながら、たどたどしくも、政治家の岸本幸蔵の娘であることや、育った家庭環境から美鈴との関係、清志郎の奇行と今に至るまでの経緯を——。
「……私が、美鈴を遠ざけていなかったら、美鈴が犠牲になることは、なかったかもしれない。お父様に言われたからって、離れていなければ……美鈴が他の友達を庇うと言った時に、何かできたかもしれない。もっと早くに、美鈴の苦しみに気づけていたかもしれない。昨日……私が、もっと、強引に止めていれば……学校なんて来なくていいって、帝くんと会わせなければ……っ」
あゆらの口から止めどない後悔の念が溢れ落ちる。膝を抱え、次第に目頭が熱くなる。
「……溜め込んだら後で
それまで黙して聞き役に徹していた志鬼が初めて口を開いた。
「全部吐き出せ、いくらでも泣け、俺のことはかっこええ銅像やと思って」
「は……な、に、それ……」
志鬼のあえて空気を読まない冗談めいた優しさが、あゆらの中で張り詰めていた糸を切った。
あゆらは泣いた。
この世に生を受けた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます