第41話
志鬼の言葉は、あゆらにも重くのしかかった。まさに、今の自分の状況に似ていたからだ。
「……どうして」
「原因はまあ、置いといて……全部終わったことや。でも、そっちはまだなんの解決もしてないんやろ?」
突如、核心を突かれたあゆらは目を見開いた。志鬼は長い前髪の間から薄く覗く目に彼女を映した。
「野次馬なんかに興味ないけど、あゆらの大声聞いて事件現場に入ったんや。あの亡くなった子と、仲良かったんやろ?」
志鬼は体育館の側を通り過ぎる時、あゆらが清志郎に反抗する声を聞き、そこに駆けつけたのだった。その様子と内容から、あゆらが遺体の人物と親しかったことや、いかにも優しそうな少年を犯人だと思っていることも理解していた。
毎日会い、付き合いの長かった学友たちは何一つ聞く耳すら持ってくれなかったというのに、今しがた初めてまともに会話をした志鬼は何もかもを察していたのだ。
それはあゆらが彼を信頼するには十分だった。
あゆらは急激に、志鬼にすべてを話したくなった。しかし、伝えてしまえば、自身が抱えている荷物を志鬼にまで担がせてしまうような気がして、言い淀んだ。
「俺はかまわんで、特に失うものもないし」
俯き躊躇するあゆらに、志鬼は言葉を促した。
「でも、あなたに……志鬼にだって、家族が」
「俺にとって血の繋がりなんか価値ないな、特に親父は大嫌いやし」
「そう……なんだか、私と似てるわね」
大事な友人を亡くしたこと、父親との確執……あゆらは志鬼に自分を重ねており、志鬼もまた、あゆらに言いようのない親近感を覚えていた。
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