第35話
その後、高校の敷地内にある大ホールで全校集会が行われ、今朝発覚した一件の説明が終わると休校となった。
生徒たちが美鈴の事件を口々にしながら学校を後にする中、あゆらは周りに何も告げず、一人でふらりと屋上に向かっていた。
今は誰の顔も見たくなければ、家にも帰りたくない。ただ一人きりになりたかった。
屋上は立ち入り禁止になっていると聞いていたが、もしも施錠されていなかったらそこで気持ちを落ち着かせてから下校しようと思った。
狭い階段を上ったあゆらは、力の入らない手を銀色のドアノブに伸ばす。すると軽く右に回ったことから、鍵がかかっていないことはすぐにわかった。
屋上に続くやや重い扉を押し開き、その先にある景色を認識するや否や——。
「おおっ、そこの別嬪さん!」
先ほど体育館で聞いたばかりの声が、再来した。
志鬼は屋上のフェンス前にあぐらをかいて座り、あゆらに対してひらひらと手を振っていた。
「ちょうどよかったわ、タオルとか持ってない? めっちゃ茶こぼしてさ」
またも予想外の再会に固まっていたあゆらだったが、志鬼の日常感溢れる言葉に我を取り戻す。
よく見ると、志鬼は食事中のようだった。地面にはコンビニのものらしき白い袋が置かれており、そのズボンは確かに濡れていた。
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