第14話

 あゆらの高校から電車の最寄り駅まで徒歩二十分。近くはないが、歩いて行けない距離ではない。


 駅に行くには、いくつか道がある。

 その中で、あゆらは最も暗く人気ひとけのない近道を選んだ。

 早く家に帰りたいという気持ちもあったが、ショックを受け判断力が鈍っていたとも言える。

 

 華やかな駅前に反して、店もなく、街灯も少ない。

 門限が六時のため、こんな遅くに外を歩くこと自体が初めてのあゆらは、少女にとって暗闇がどれほど危険なものかわかっていなかった。

 しかし、あまりに静まり返ったその道に、あゆらはようやく怖さというものを感じ始めた。

 

 ――大丈夫よね……遅いと言っても、まだ八時なんだし。


 あゆらが心持ち足を速めながら、なだらかな坂を越えようとした時、足元に空き缶が飛んで来た。

 静寂の中、カツンと響く乾いた音に、驚いたあゆらは立ち止まり、感じた気配の方向を見た。

 そこには一人の痩せた男が立っており、にたにたといやらしい顔つきであゆらを見ていた。

 その男の背後にはねずみ色の大きな家があり、そこの門前には太った男と、背の低い男がたむろするように座り込みながら、笑っていた。


 ——そうだ。と、あゆらはハッとした。

 駅に向かうまでの裏道で、中年になっても仕事をせず親にたかり、道楽を尽くしている男たちがいると聞いたことがある。

 悪い噂しかないため、その道は通らないようにと、以前ホームルームで教師が告知していたことを今更思い出したのだ。

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