筋肉喫茶を思い付きました
黒幕横丁
筋肉喫茶??ん??なんて?
「筋肉喫茶とかいいですわね」
「は?」
新勝学園の食堂で今日の定食であるカレー定食をウキウキで食べている私の横で、楽しそうにこの学園の生徒副会長であるアリスが呟いた。
「アリスさん? 食事中に何いきなり行っているんです?」
あまりにも突拍子もない発言にスプーンの動きを止める私。
「何か新しい事業は無いかと考えていたところですの。この間の極道茶屋は大盛況でしたから、似たような系統の事業をすればまた人気が出るのではないかな、と思いまして」
極道茶屋とは、私たちが文化祭で行った出し物である。極道っぽい雰囲気の茶屋で任侠映画みたいなイベントがちょこちょこ起こるというなんとも物騒な茶屋だった。まぁ、出し物といっても企画運営のみ生徒が行い、従業員はアリスがその筋から集めてきたモノホンだったわけなのだが。
「なかなかない体験喫茶でしたからねぇ、アレは」
個人的に絵面がなかなかにキツかったとは口が裂けても言えない。
「で、私思いつきましたの。極道の次は筋肉が来るって」
どうしてその方程式が成立するのかを教えてほしい。多分、数学業界で懸賞金が付くような難問案件だ。
「リョウさん。筋肉たちに囲まれる喫茶店。なかなかに素晴らしいと思いませんか?」
アリスがうれしそうにそう話すので、そんなに素晴らしいものかなとマッチョ集団に囲まれながらお茶を飲む所を想像してみたが、全く落ち着かない。
「アリスさんすいません。私の想像力が乏しいのか、全く落ち着きません」
「えぇ。そうなんですの!? すいません、私がリョウさんを苦しめてしまいました。ここは漢らしく、切腹で」
アリスはそう言うとさっきまで使っていたカラトリーのナイフを持って、自らの腹に向ける。
「ストップストップ! 苦しんでないですから落ち着いてください」
「そうなんですか? 私ったらつい早とちりしてしまいました」
アリスはナイフをテーブルに置いた。
「さすがにマッチョの集団に囲まれながらお茶をするのは落ち着かないと思うので、筋肉を推すのなら筋肉にしかできないことをすればいいんじゃないですかね?」
「筋肉にしか出来ないことですか?」
「例えば、ジューサー無しにオレンジや林檎を潰したジュースを提供するとか。料理は筋肉にいい低脂肪高タンパクにするとか、サービスでお姫様だっこをするとか……」
なんでそんなに思いつくのだ自分と思うほど、ペラペラと筋肉喫茶のアイデアが口から出てくる。その様子をアリスはポカンと見ていた。
ヤバい、引かれてしまったか。ハッとした私は慌てて口を手で覆うが、アリスは私が塞ごうとした手を両手で掴む。
「さすがリョウさん、素晴らしいですわ! 早速、企画書作成してきますわ! では、ごきげんよう」
キラキラした目の彼女はルンルン気分で食堂を去って行った。
数週間後、アリス企画の筋肉喫茶が近所にオープンし、瞬く間に人気店へと成長していったのであった。
筋肉喫茶を思い付きました 黒幕横丁 @kuromaku125
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