第10話 出発、ララの役目
「あの、小公爵さま。良かったんですか、護衛の数が……」
≪極秘任務なんだって≫
私の言葉に面倒そうにヴィントが呟いた。その言葉は私とカイルさまにしか聞こえない。不安で困惑してしまった私にカイルさまは優しく微笑んだ。
護衛の数は少ない、だが極秘任務なら多いのではないか? 一目で貴族ないしかなりの富裕層だと分かる一団だ。ただ家格に比べて馬車がーーそれでも豪華なんだけれど、地味な印象。
アランが馬車を確認して、
「防護の魔法などは付与されていないのですか?」
そんな問いを近くにいた騎士に投げかける。というか騎士が護衛して、こんなに豪華なのに極秘任務!?
「詳細は馬車の中で話すよ」
カイルさまが指示を出し、カイルさまとヴィント、私とアランはそれぞれ馬車に乗り込んだ。アランは騎士たちと一緒に行動した方が良いのではないかと思う。
そんな私の視線に気づいたのか、アランは「俺……出世したんだ」としんみり言う。
何故、出世して悲しそうにするのか? 私が不思議に思っているとカイルさまが苦笑した。
「ララ嬢の護衛騎士に任命したんだ。つまり、役割は前のままってことさ」
「それの何が……?」
「俺だって魔物討伐に行ったり、街の警護したりしたかったーー!!!!」
昔から何だかんだ騎士に憧れて、事件が起きたとは言え神殿から出て夢がかなったと思っていたのに、想像と違う、と。失礼すぎてムカつく。
「それで、任務の詳細を教えてください」
「ああ、そうだったね。一つの村が魔物に支配されていたことが旅人の証言から分かったんだが、税も収められているし、むしろ人間の領主が治めていた頃よりもずっと村は豊かになっているらしい」
「良い事ですね」
魔族は女神ディアナと敵対する存在と言われているけれど、結果的には良いことなんじゃないか?
そんな私の考えを見透かすようにカイルさまは言葉をつづけた。
「それが本当か、村人は無事なのか、魔族の目的が何なのか、それを調べるために我々はこれから≪視察≫しにいく」
魔族が人間を虐げていたらこのまま討伐。精霊騎士であるカイルさまと公爵家の騎士団がいるのなら大きな被害は起きないだろう。
「友好的であれば、一個体であったとしても魔族とは共生関係を築いていきたい。彼らは私たち人間よりもずっと強大な力を持っているからね」
私はそんなこと考えもしなかった。
人にも様々あるように、意思があるなら魔族にだって何か事情があるのかもしれない。言葉が通じなくても魔族と村人が上手く暮らしているのなら、それを周囲に伝えられるのは翻訳師である私の役目だ!
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