第69話 逃げられませんよお兄様?
ジトッとした三島からの疑いの視線を感じながら、俺は二反田についてもう一つあることに気が付いた。
「そういや、お前。新入生の代表挨拶の練習行かなくて良いのか?」
「……代表?」
二反田は何も分かっていないように首をひねる。
「試験の主席合格者は新入生代表になるんだ。二反田は特待生だからアイドル課の主席合格みたいなモンだろ?」
「……そういえば、そんなこと書いてあったかも」
「もしかして、真子ちゃんも読み書きできないの?」
「いや、こいつの場合入学案内をちゃんと読んでないだけだろ」
「真子、入学案内の封筒貸して」
三島はそう言って二反田から手紙を受けって代わりに読んでいく。
こいつ、お姉ちゃんだからか何だかんだ面倒見が良いよな。
「『二反田様はアイドル課の代表となりますので8時にステージにお集まりください』ってちゃんと書いてあるじゃない!」
「今、8時半だね……」
「あはは……杉浦! どうしよう!」
「大丈夫だ。挨拶なんだから最悪『こんにちは、良いお天気ですね』でも良いはず……」
「また屁理屈を……」
そんな話をしていると、何やら周囲の生徒たちがザワザワと騒ぎ始めた。
みんなの視線の先には、金髪に縦ロールの派手な生徒がシャナリシャナリと優雅に歩いている。
その隣には付き人のような人が日傘を差して彼女を日差しから守っていた。
「――おいあれ、例の財閥のご令嬢らしいぜ!」
「マジかよ!? アイドル課に入学したって本当だったんだな!」
「すげー、彼女をアイドルプロデュースできたら俺も大金持ちになれんじゃねぇか!?」
そんな彼女の存在感に一ノ瀬、二反田、三島も目を奪われていた。
「なんか凄い人がいるね~」
「うん、育ちが違う感じがする!」
「どうして財閥のお嬢様がわざわざアイドルなんかに?」
そして俺は冷や汗をダラダラとかいて3人に断りを入れた。
「……悪い、俺は急用を思い出したからすぐに式場に向かわせてもらう」
しかし、俺が式場に向かおうとすると、すでに背後には黒服が居て掴まれてしまった。
そして、例の金髪お嬢様はツカツカと俺のもとまで歩いてくる。
「――わたくしから逃げられるとでもお思いですか? 誠お兄様?」
有名な"杉浦財閥"のご令嬢、杉浦
彼女は俺に、にっこりと微笑んだ。
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