第50話 作者の気持ちを答えよ
【前書き】
杉浦視点に戻ります。
――――――――――――――
「――えっ!?」
三島のダンスを見て、思わず声を上げる。
いや、俺だけじゃない。
試験官もプロデューサー達も驚いていた。
三島が、センターに来たら突然『ダンス☆ボーイ』のお手本と違う振り付けで踊りだしたからだ。
しかし、俺が驚いたのはそれだけじゃなかった。
(この曲、俺が付けた振り付けだと『シャーロット』のみんなは難易度が高くて踊れなかったけど……)
正直、『ダンス☆ボーイ』の振り付けをみて少し残念に感じていた。
依頼された通りに作ったのだろうけど、俺の曲が試験のひっかけ問題のように使われていたから。
でも、三島は俺の曲を誰よりも理解してくれているように踊る。
――ジャンプ、スピン。
クイックなステップやターンが織り成す三島の華麗なダンスは"審査員"を"観客"に変えた。
彼女の腕は、可憐な翼を持った鳥が空中を切り裂くような鋭い切れ味を持っていた。
柔軟な身体は、音楽のビートに忠実に反応し、瞬時にポーズを変える。
そのダイナミックな動きは俺たちの目をくぎ付けにして、息をもつかせなかった。
「ふぅ……ふぅ……。あははっ」
そんな激しいダンスを踊りながら、三島が初めて笑顔を見せた。
息を切らして、心底楽しそうに声を上げて。
アイドルとしての作った笑顔じゃないだろう。
本当に、楽しすぎて不意に笑ってしまったようだった。
だからこそ、その場にいるどんなアイドルの笑顔よりも魅力的に思えた。
――こうして、最終試験のダンスは終わった。
途中から好き勝手に踊っていた三島も最後はみんなと動きを合わせてビシッとキメる。
俺は思わず立ち上がって拍手を送った。
すると、俺に倣って他の数人のプロデューサーたちも拍手を送る。
「はぁ……はぁ……」
1人だけ、倍くらいの運動量で踊っていた三島は頬に汗を垂らしてまだ呼吸が整わないようだった。
でも、この会場に入ってきた時のつまらなそうな表情とは違う。
火照って赤く染まる顔は、立派なアイドルの姿そのものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます