第45話 三島だけがズレている
~♪
音楽が鳴ると、アイドルたちは軽快に踊り出した。
三島も笑顔こそないものの、誰よりもキレのある動きで踊っている。
アイドルたちは、与えられた時間でダンスを練習していたと言っていた。
分からないが恐らく、1時間程度だろうか。
しかし、三島はその貴重な練習時間を30分ほど俺と中庭で話していた。
だから心配していたのだが今のところは大丈夫そうだ。
つまらなそうな表情で文句なしの踊りを披露している。
(……そういえば、そもそも三島はなんであんな所に1人でいたんだろう?)
俺は不意に、三島と最低な出会いを果たしてしまった中庭のベンチの場所を思い出す。
あの時、三島は確か1人で耳にイヤホンを入れて……何か音楽を聴いていた。
最終審査で使われる音楽を聞いてイメージトレーニングをしていたのだろうか。
(たった1人で、外に出てまで……?)
頭の中でそんなことを疑問に思いながら、俺はアイドルたちのダンスを見る。
そして、アイドル達が『ダンス☆ボーイ』さんの作った振り付けに従ってポジションを移動しながらダンスをしている時。
――それは、起こった。
(……三島だけ、他の4人と動きがズレてる)
全員が並んで踊ると一目瞭然だった。
当然、気が付いたのは俺だけじゃないだろう。
俺の曲、『スターライト』には歌詞がない。
しかし盛り上がる部分、つまりサビのような部分は存在する。
そこの盛り上がりのみを意識して練習すると起こりやすいミスだ。
つまり、ある程度ダンスに慣れてしまっている方がここでは気の緩みから注意力が抜けやすい。
その後も、何度も三島だけ他の4人と微妙にタイミングがズレている瞬間があった。
実際に5人全員でレッスン室の鏡の前でリハーサルしていたなら、こんなミスは気が付かないはずがない。
恐らく、三島は全員での練習に参加していないのだろう。
いや、参加させてもらえなかったのだろうか。
とにかく、それなら1人で外にいた理由も説明できる。
(……やっぱり、細かい部分で何度も動きやタイミングを間違えてる)
俺は固唾を飲む。
(――三島以外の……4人のアイドルたちが)
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