第41話 また会いましたね、変態


「それでは、試験会場に移動する! お前ら、俺についてこい!」


「みなさん、頑張ってくださいね!」


 グラサン試験官と水無月学園長が先導し、プロデューサーの候補生30人程度は移動した。


 試験会場と思わしきレッスン室の前に着くと、その内部を見せてくれた。

 簡易的なライブのステージとその目の前に長机が用意されている。


 グラサン試験官はまた2次試験の時と同じようにクジの入った箱を取りだす。


「では、プロデューサーの候補生であるみんなは5人ずつに分かれてこの部屋と同じ作りの各試験会場に移動してもらう。会場はまたくじ引きで決める、アイドルたちも同様だ」


「私は黒田さんと同じBの教室で審査に加わってます。お会いするのを楽しみにしてますよ」


 そんな2人の説明を聞いて俺たちはクジの入った箱に手を入れていった。


(Bは嫌だ……Bは嫌だ……)


 さっきのりんごの問題でグラサン試験官に若干嫌われている俺がそう願ってクジを引くと……見事にBだった。

 人生ってそういうものだよね。


「杉浦はどこだった? あぁ~、残念。僕とは別の会場だね」


 月読が勝手に俺のクジを見ると、Aと書かれたクジを見せてきた。


「わ、私はD……でした。みんなバラバラですね……」


 そして、雪華さんも来て俺にクジを見せる。

 優秀なこの二人と同じ会場にならなくて良かった……と俺は心の中で安堵した。

 比べられたら落とされそうだし。


「じゃあ、みんな合格できるように頑張ろう!」

「月読はもう何もしなくても合格なんじゃね~かな。一番ヤバそうなのは俺だ」

「だ、大丈夫です! 1浪くらいしても全然大丈夫です!」

「雪華さん……そこは『大丈夫です、合格できます!』って言って欲しかったな……」


 3人でそんなことを言い合って、お互いの健闘を願う。


 そして、俺はBの教室へ。

 他の4人のアイドルプロデューサー候補と一緒にステージ前の長机に座った。


 試験開始の定時になると、グラサン試験官は声を張り上げる。


「時間だ! 審査対象のアイドルたちにパフォーマンスをしてもらう! では、入場してもらおう! 即席アイドルユニット、『シーサイドガールズ』だ!』


「「よろしくお願いしま~す♪」」


 そう言うと、アイドル候補生たちが満面の笑みを作ってステージに出てきた。

 5人のアイドルたちは2次試験とは違うお揃いのアイドル衣装を着ている。

 最終選考まで来ているだけあって、みんな個性や魅力に溢れている感じがした。


 その最後尾には一人だけすまし顔の彼女――なんと、三島も一緒に入場してきていた。

 まさかの再会。

 そして、三島は俺を見つけると分かりやすく眉を引きつらせる。


「また会いましたね、変態」


 声を出さずに口をパクパクと動かして、俺にだけそう伝えているのが分かった。

 これ、なんてファンサ?


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