第37話 まずは簡単なクイズです

 

「ガッデム!! お前ら席に――ついてるな。お行儀の良いつまらん奴らめっ!」


 最終試験の開始時間になると、グラサン試験官が前に出て来て無茶苦茶なことを言った。

 どうすりゃ褒めてくれんだよ。


「では最終試験だが……その前に全員にこれを聞くことにしている。知らない奴も多いだろうが有名なクイズだ。これは合格には関係ないから肩の力を抜いて答えてくれ」


 そう言うと、グラサン試験官は右手で指を3本立てて、左手は5本全ての指を広げて俺らに見せる。

 グラサン試験官の指がちゃんと全部あってホッとしたのは俺だけじゃないはずだ。


「ではクイズだ。『3つのリンゴを5人のアイドルで平等に分けるにはどうすれば良い?』。なお、道具は好きなものを使って良いこととする」


 本当にただのクイズだった。

 グラサン試験官は考える間もなく指名する。


「じゃあ、雪華から順に聞いてくぞ」


「ひぇぇ!? い、いきなり私ですか!? な、なんでぇ!?」


 半泣きになる雪華さん。

 慌てながら必死に考える。


「えっと……3つのリンゴを5人で……ぶ、分度器を使えば平等に切り分けられるんじゃないですかね? 360×3÷5なので……216度ずつに切り分けたリンゴを渡していけば平等……だと思います」


 雪華さん、計算速いな……。

 確かに聞こえは平等に感じる。


 グラサン試験官は続けて嵐山を指さした。

 嵐山はニヒルに笑う。


「おいおい、切る角度がおんなじだからって平等とは言えねぇだろ。リンゴは完全な球体じゃねぇ、凸凹してるのだってある。だから重要なのは同じ重さにすることだ。秤を使えばみんな平等に分けられるだろ」


 流石は嵐山。

 シンプルな上に本質をついている気がする。


 その後に続く候補生たちも嵐山とほとんど同じ結論だった。

 中には「私も食べるので、3つのリンゴを2等分すれば6人で分けられます」なんて回答もあったが。

 しかし、月読が異を唱える。


「数の平等、重さの平等、それだけじゃないね。3つのリンゴが全て同じ味とは限らないだろう? 甘いのがあれば酸っぱいのもあるかもしれない。"味の平等"も必要だ。つまり、全てを潰して混ぜてリンゴジュースにするとか、調理すれば味は大体同じになるんじゃないかな。例えば……僕ならアップルパイとかにして食べたいな」


 味も平等に……その発想はなかった。

 月読は実際に食べるところまで想像力を働かせたらしい。

 そして、この様子だと多分自分もアイドルからもらって食べるつもりだ。


「じゃあ、最後に杉浦! テメーはどうする?」


 そして、俺が答える番がやってきた。

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