第31話 それって恋じゃね?
「ど、どうして『X』さんがお嫌いなのでしょうか……?」
俺は内心冷や汗をダラダラと流しながら質問する。
「それを貴方に教えて欲しいんですよ。私、人生はヌルゲーだと思って生きてきたのでこんなバグが起こったの初めてなんです。気になって、気が付いたら私もアイドルになる為の試験を受けてました」
「……じゃあ、どんなところが嫌いなのか教えてくれるか? できるだけ改善――じゃなくて原因を考えてみるから」
三島は顎に手を添えて考え始めた。
「初めてテレビで見た時は『何か気になるな~』くらいだったんですよ。でも、その後ご飯食べてる時も入浴中も寝る時もなんか『X』の顔が脳裏にチラついて……」
三島は今度は腕を組んで続きを話す。
「モヤモヤして気味が悪いので、もう一度ニュースで『X』の特集を見たんですよ。そうしたら、今度はすっごくイライラしました」
「どんなところにイライラしたの?」
「そうですねぇ、ライブ中の『X』もムカつきますし、観客が『X』のことをチヤホヤしてるのを見るのも凄くイライラしました」
「なるほど……」
俺も三島の真似をして腕を組み、考える。
そして人差し指を立てて、結論を出した。
「それって――恋じゃね?」
「…………」
三島は無言でコーヒーを一口飲んだ。
「話、聞いてました? 私は『X』を見ると凄くイライラするんですよ?」
「テレビに映る『X』に……だろ? テレビに映った『X』はライブの観客に笑顔を向けてる。イライラするのは『自分以外の人に笑顔を見せていることへの嫉妬』なら説明がつく」
「…………」
三島は口を開いたままフリーズしてしまった。
「次に『X』がチヤホヤされているのを見るとイラつくのは、自分以外の女が『X』に好意を持ってるのが許せなくて――」
「ちょっ……ちょっと待ってください。少し……少しだけ」
そう言うと、三島の顔がみるみるうちに赤くなっていった。
「こ、これが恋……なんですか?」
「お前、もしかして初めて……?」
三島の顔は庭園に咲くバラのように、さらに赤みを帯びていった。
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