第19話 月読がなんか可愛い件

 

 俺が二反田の胸の中で窒息しそうになっていると、グラサン試験官は一喝する。


「おい、喜んだり悲しんだりするのはまだ早えぇぞ! 雑誌の順位はあくまで採点の一部だ。ここからは実際に撮影しているときの様子の点数も加わる。さらに、1次試験の点数との合算だ」


 そうだった、まだ決まったわけじゃない。

 雑誌のカバーは成果物、企業にとってはそれが全てだがここは学園。

 生徒の撮影への向き合い方も点数になる。


 それを聞いて、雪華さんがまた一転絶望的な表情になる。

 いや、多分雪華さんは大丈夫だよ。

 試験官たちベタ褒めだったし。


「次の最終選考に進める者の名前を書いた紙を今からここに掲示する。プロデューサーの候補生は右に、アイドルの候補生の結果は左に掲示する」


 そう言って、試験官の皆様は前方の壁に大きな画用紙を張り出した。

 30人だったプロデューサーの名前はさらに少なくなっている。

 連なる名前の中で、俺は『杉浦誠』の文字を探した。


「――よし! あった! 2次試験通過だ!」

「――やったぁ! 私も2次試験通過できました! やりましたねっ!」


 同時に自分の名前を見つけると、隣にいた雪華さんが俺の手を握ってピョンピョンと飛び跳ねる。

 二反田もそうだけど、雪華さんも意外とグイグイくるところがある。


 そんな様子を見ながら、月読が拍手をしてくれた。


「杉浦、おめでとう! ちなみに僕はまだ自分の名前を見つけられてないんだ、一緒に探してくれる?」


「いや、月読は前回1位で今回は2位……もう確認するまでもなく2次試験は通過してるだろ」


「そんなこと言うなよ~。僕だって、杉浦と一緒に喜び合いたいんだから。雪華さんだけズルいじゃんか~」


 月読は子供が拗ねるように頬を膨らませて俺をジト目で睨む。

 本当に可愛いなこの美少年。


「分かったよ。ほら、手ぇ貸せ。一緒に飛び跳ねてやる」


「――わっ!? きゅ、急に手を握るなよ! こっちだって心の準備があるだろ!」


 俺が投げやりに手を握ると、月読は顔を真っ赤にして怒る。

 月読に変な感情を抱きそうになっていると、男性の怒号が聞こえた。


「ふざけんな! なんで俺が脱落なんだよっ! 俺の表紙は4位だぞ! 花宮が通過なら俺も通過だろうが!」 


 そこには俺と交換して花宮とペアを組んだ男性プロデューサー志望、渡辺大輔がわめき散らかしていた。

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