第16話 謎のアイドル『X』の評判
「杉浦~! お待たせ!」
撮影スタジオ前に時間通りにやってきた二反田と俺は再会した。
せっかくなので恐る恐る聞いてみる。
「なぁ、二反田も『X』ってアイドルのことは知ってるか?」
「えっ!? な、なんだよぅ……いきなり」
「あぁ、すまん。周りのみんなが話題にしてるから気になってな」
すると、二反田は少しモジモジしながら話す。
「じ、実は俺も例に漏れず『X』をテレビで見て心を掴まれた一人だ。俺がこの学校に応募するキッカケの一つだったと思う。い、いつか会えたらいいな……なんて下心も……ある」
「じゃあ、二反田も『X』がまたアイドルとして活動して欲しいって思うのか?」
俺の質問に二反田は首を横に振った。
「ううん……『X』はきっと自分の意思で芸能界に出てこないんじゃないかな? それって、アイドルをするよりも大切なことがあるってことだろ?」
二反田はそう言って笑う。
「だから、俺は『X』が他にやりたい事があるなら応援すべきなんじゃないかなって思うんだ。確かに『X』をもう一度見たいって気持ちはあるけど……」
信頼するような瞳で、二反田は俺を見つめる。
「杉浦が教えてくれたろ? 何をやるか、何をやらないか、何ができるか、何ができないかは他の人が決めつけられることじゃないんだ。だから、ファンとして『X』がアイドルをやらないって気持ちも応援したいよ」
「二反田……」
「――って、俺なんかが何言ってるんだろうな!? 杉浦が変なこと聞くからだぞ!」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にする二反田に背中をバシバシと叩かれる。
二反田の応援は、俺には凄く有難かった。
「きっと、二反田もいつか『X』に会えるさ。もし会えたらどうする?」
「えぇ~!? そ、そんなの分からないよ!」
二反田は顔をさらに赤くした。
女子高生ってこういう話好きだよな。
「握手とかされたら嬉しいのか?」
「握手!? そ、そんなの腰抜かしちゃうよ! 俺は遠くから一目だけでも見ることができたらいいな~なんて……えへへ。って、こ、こんな妄想してる場合じゃないだろ!」
二反田は俺の手をギュッと握る。
「まずは2次試験を通過しないとだろ? 杉浦、俺も出来るだけ頑張るから!」
「あぁ! そうだな! 一緒に頑張ろう!」
俺と二反田は撮影スタジオに入った。
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