2021/11/12 『傲慢』

 先日は夜更かしをして携帯で動画を見ていた。そうして昼の一時ごろ、父の昼ご飯はいるか、という声で起きた。

 学校へ向かうまで一時間程度あった。湯を沸かし、冷凍庫に入った珈琲豆を選ぶ。父に振舞ってやりたかった。

 台所には父の用意した昼食があった。私はそれを口に運びながら、カフェインの多い浅煎りの珈琲を手に取り、豆挽き器で豆を挽く。

 父に珈琲をコップ一杯振る舞い、私は居間で昼の朝食を取った。やや家を出るのが遅れたが、学校へはなんとか間に合いそうである。時間帯も昼だからか、電車はさほど混んでおらず、通学の殆どを占める車内は座席に座って時間を過ごせそうである。

 私がついた席の隣、四十ほどの社会人が、電車の隅でうたた寝していた。彼はどことなくやつれているように見えた。電車の止まるのと同時に起きて、停車駅を確認して、また寝る。彼の手元にあるのは、私が父に与えられたものよりもいくらか古そうな携帯電話。

 彼はこうして家に帰って、まず最初に何をするのだろうか。

 あるいは、これから働きに出るのだろうか。

 私と彼の違いは、気の持ちようなのだろうか。

 どうか、安らかであって欲しい。

 そんなふうに思う自身が、どうも醜く感じられた。

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