第6話

「そういえば、アシェルを見たときに神力についてあったけど、それが神に星力を集める理由なのか?」

「そうだ。神力は基本信仰を力として使うのだが、細かい制約があってな、人々が神に祈る内容によって使える力が変わるのだ。例えば癒やしの力を求めて祈られた時、神は癒しに関係のある力しか使えない。その逆も然り。それに人々は自分が求める力を持つものに祈りを捧げる。だから神は、大抵一つの方向性に特化しているのだ。」


 神力の説明を見たときは万能の力みたいに見えたが、そんな事はないのか。でも、イメージする神って大抵何かを司っているからイメージ通の能力だよな。


「星力はそんな制約を受けずに神自身の思い通りに自由に力を行使することができるのだ」

「なるほど、それで神が天落人を帰還させることができるのか」


 アシェルが協力してくれるし、帰環する目星は立ったけど、俺の能力じゃ魔物を倒せないんだよな。


 情報がわかるだけだし、発動にも時間がかかるしホントどうしようも無いな。


 能力自体に攻撃性が無いから、素の状態で戦わないいけない。しかも、武器も持ってないしな。


 魔物の強さがわからないが、倒せても一番弱いやつだけだろう。


「この能力だと魔物なんか到底倒せるとは思えないけどどうするんだ?」

「今の我には魔物を倒せないからな、武器は残して置いた星力を使って出してやるから、お主が倒すのだ」


 そういったアシェルは目を瞑り集中すると手を前に突き出し、何かを乗せているような態勢をとった。その瞬間、アシェルを中心に蒼銀に光る粒子が渦巻く様に立ち昇る。蒼銀の粒子は次第に手の上に集まり、剣の形を成していく。


 あまりに幻想的な光景に見惚れてしまった。数十秒ほど経った頃には手の上に剣が出来上がっていた。


「ふぅ…」


 アシェルは出来上がった剣を持って俺の前まで来た。


「ほれ」

「あぁ…」


 俺に剣を渡すと、アシェルは少し疲れたのか、額の汗を拭っている。渡された剣を見てみるが、何も装飾されてないただの鉄の剣に見える。何か特別な力でもあるのか?


「この剣にはどんな力があるんだ?」

「期待しているようで悪いがそんなものはない。見たままの普通の鉄の剣だ」

「それで魔物を倒すのは無理だ!俺は剣を振ったどころか喧嘩もまともにしたこと無いんだぞ」

「それでもやるのだ。じゃないと帰環なんてできないぞ」


 確かにその通りだ。俺はアシェルの力を見て調子に乗っていたのかもしれない。アシェルがいればなんとかなるんじゃないかって。


 けど、何から何まで頼りきりなわけにはいかないよな。


 さっきまで無かった武器があるんだ、魔物ぐらい倒せないと男が廃るってもんだぜ。


「悪かったアシェル、弱音なんて吐いて。武器が手に入ったんだ魔物ぐらい倒して見せるよ」

「そのいきだ、よし、それでは早速魔物を倒しに行くぞ!」


 俺はカバンを置いて剣だけを持って、アシェルと共に神社がある広場を出て、森の中に入って行った。


 

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