第4話

 ただの高校生に魔物を倒すことのできる力なんて有るわけなかった。


「善斗はまだこの世界に来たばかりだろうから、自分がどんな能力を持っているか把握してない筈だ」

「もしかして俺に何か能力があるのか!」


 俺に能力があるような言い方だったので思わず期待で声が大きくなってしまった。


「この世界の全ての生物は大なり小なり能力を持っているのだ。能力は宿している星力の大きさによって強さが変わるのだが、天落人は例外なく、この世界で産まれた生物よりも大きな星力を宿している」


 じゃあ俺も何か力を持っているのか!しかも天落人だから通常よりもすごい能力を!ファンタジー小説みたいなことが出来ると思うとすごい興奮する。


 その一方で、自分では何も特別な力があるようには感じられないから、唯一の例外なのではないかと不安な気持ちもある。


 そういえば、星力が何かについて聞いてなかったな。


「なあ、今更なんだが星力ってなんなんだ?」

「星力は世界が発するエネルギーのことだ。場所によっては魔力や霊力と言ったりするな」


 なるほど、世界そのモノのエネルギーの名称なのか。異世界では定番だな。


「それが俺の中に大量にあるのか?自分ではわからないんだが」


 アシェルは俺の言葉に頷くと目の前まで近付いてきた。そして俺の手を握ってきた。


「口で説明してもわかりにくい、我が直接善斗に星力を流してやるからしっかり集中するのだぞ」


 いきなりアシェルみたいな美少女に手を握られて、女子経験の少ない俺はドギマギしていた。が、直後に今まで感じことの無い感覚が握られた手から入ってくるのを感じとった。


 消して熱くはない炎が広がっていく感じで、その感覚が腕を伝って胸まで来たとき、自分の心臓付近に今まで感じとれなかった膨大な何かがあることに気づいた。


 その感覚に意識を集中していると、ぼんやりと頭の中に自分の能力についての詳細が浮かんできた。よりはっきりさせるためにさらに集中する。


 そして、体感的に10分ほどが経ったとき、自分の能力について完全に理解することが出来た。集中するために閉じていた目を開き、そのことに気づいたアシェルが星力を流すのをやめ、ゆっくり手を離した。


「自分の能力が何かわかったか?」


 そう問いかけてきたアシェルに頷き返し、自分の能力について話すことにした。


「俺の能力名は『見通す目ルガルデ』、効果は意識して見たものの情報を知ることが出来るというものだ」

「それだけか?」

「そうだけど」


 アシェルは俺の返事を聞いて、気まずそうにしながら話し出した。


「天落人にしてはあまりパッとした能力では無いが、まだ試した訳でも無いしあまり落ち込むでないぞ」


 慰めようとするアシェルに、やはり俺の能力は強く無いのだと察した。正直自分でも気づいていたのだ。


 異世界ものでは鑑定などの情報を知る能力は強いが、俺の『見通す目ルガルデ』は情報を知るために一々集中する必要があるし、星力を集めるために魔物を倒さないといけないのに、そのための直接的な力がない。つまり、戦闘では使えない能力なのだ。


 すごい能力があると期待していた分、がっかり感がすごい。けして使えない訳では無いが、俺が期待していたのは全てを燃え上がらせる炎を出したり、どこにでもすぐに行ける瞬間移動をしたりなどの派手な能力だったからだ。

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