第2話
神社は少し拓けた所にポツンと立っている。周りには神社に繋がる道すらない。
何でこんな何も無い所にあるのか不思議に思うが、とりあえず寝床に出来そうな場所を見つけられた事はラッキーだ。
まずは神社の中を確認したいが何かいるかもしれない。俺は足音を建てないように慎重に近づいた。
目の前まで進み耳を澄ますも中から音は聞こえない。
俺は少し安心しながらも最後の確認をするために引き戸に手を掛け、少し開き中を覗き込んだ。
神社の中は薄暗く、はっきりとは見えない。ただ、外見のボロボロさに比べたら神社の中はまだ綺麗なように見える。
ぱっと見は居間だろうか。畳の上に机と座布団があり、部屋の奥には襖がある。
部屋を見渡すと至るところに埃が積もっていて、人が生活しているようには見えない
俺はそのままゆっくり開け室内に入った。
「おじゃましま~す...」
一応声をかけてみた。返事は期待してなかったがが、予想外のことが起こった。
「誰だ〜...」
奥の襖の向こうの部屋から返事が返ってきたのだ。聞こえてきた声は幼く、眠そうな少女の声だ。
「すみません!勝手に入ってきてしまって!」
俺は慌てて勝手に入った事を謝った。出て行こうと思ったがここが何処なのか聞きたい事もあって、どうしようか迷っている間、襖の奥からゴソゴソした音が聞こえてきた。暫くした後、襖が開いた。
俺は現れた少女の纏う独特な雰囲気とその美貌に思わず見惚れてしまった。少女は灰色の髪を肩下まで伸ばしており、ややつり上がった大きな瞳は虹色に輝いていて、一目で普通の人間ではないとわかる。
「それで、こんなところまで来て何か用か」
「え、あ、はい、実は目を覚ましたらこの森にいて...ここは偶然見つけたんですけど...」
見惚れてた事もあってどもってしまった。
「ほう、ということはお主は
「てんらくびと?」
聞き慣れない言葉に聞き返してしまった。
「天落人とは他の世界からこの世界に落ちてきた者のことよ」
「世界から落ちるって、そんな事が起こるんですか?」
「ああ、起こる」
少女の言葉を聞いて理解した。あの時感じた異常な揺れと、そのときに落ちた穴でこの世界に来たのだと。
普通なら到底信じることの出来ない内容だが、既に不思議なことが起こっている身からしたら納得できてしまう。
それに今いる世界が本当に異世界ならば、聞かなければならないことがある。どういう答えが返ってくるか少し怖いが、俺は少女に聞く事にした。
「元の世界には帰ることはできますか?」
俺の今後に関わる重要な質問だ。これからの人生がどうなるか決まるのだから。
少女は俺が質問ばかりしているからか少々不機嫌になりながらも答えてくれた。
「それは無理だ」
俺は元の世界に帰れないと聞いて動揺してしまった。俺はただの高校生だし、あの生活が心底良かったかというとそうでもないが、大切な家族が、妹が居るんだ。俺は妹の為にも帰らないといかないんだ!
「我が知る限りでは天落人が元の世界に帰れた事はない。世界から落ちたということは、元の世界に戻るには上に上がらないと行けないからな。落ちるのは簡単だが、その逆は難しいのだ」
理由を聞いてなんとなく納得してしまった。仮にあのときの穴が目の前にあっても、俺にあの穴を登ることなんて出来ないからだ。
少女は俺があまりにも落ち込んでいたからか、ため息を吐きながらも言葉を続けた。
「ただ、星力を大量に集めた神は世界を渡る事ができると聞いたことがあるな」
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