穴に落ちたら異世界で神の少女と出会った

@rutuki

第1話

 俺は今とても混乱している。


 学校帰りに少し近道をしようとして人通りの少ない路地を通ることにしたんだ。


 そしたら、まるで経験したことの無いような空間ごと揺れているような地震が起こった。


 揺れは立っていることも難しいほどで、俺は両手を地面につけながらも必死に地震に耐えた。


 ただ、それもほんの数秒のことで突然体が浮遊感に襲われた。深い穴に落ちていっていることはどんどん遠くなっていく空を見て気付いたが、落下中の俺にはどうしようも無かった。


 あ、俺死んだわ...と思いながら意識を失った。



 そして気づいたら何故か森の中にいる。これが今俺に起こっている現象だ。


 正直意味がわからない。あの高さから落ちたら死んでるはずだし、万一生き残ったとしても森の中にいる理由がわからない。


「まさか......異世界転生とか?」


 いやいやそんなまさか......でもこの状況を説明出来るのはそれくらいしかないしな。


「このままここにいても助けなんて期待できないし、とりあえず探索するか」


 改めて周囲を見渡すと、周りには瓦礫が落ちていることに気づいた。ただの石などではなく道路や塀がバラバラになった物のように見える。


 あの時一緒に落ちてきたのだろうか。


 瓦礫を見ていると、最初は気づかなかったが瓦礫の中から自分のカバンが見えた。


 急いでカバンを回収し、中を確認すると教科書などはぐちゃぐちゃになっていたが、それがクッションになったのか中に入れていたスマホは無事だった。


 正直あまり期待はしてないが、スマホを使い助けを求めようとしたが案の定圏外だった。


「まあ、こんな森の中じゃ繋がらないか」


 助けを求める事は諦めて他にカバン以外の物が落ちていないか探したが何も見つからなかった。ただ瓦礫が落ちているだけでそれ以外は木しかない。


「このまま同じ場所にいても意味がないし、先ずはこの山からの脱出を目標に行動するか」


 広さは分からないが、この森を一日で脱出できるとは思えない。だってただの高校生だからな。


 そうなると、問題になってくるのが食料や飲水、それに寝床だ。カバンの中には飲みかけのお茶しか入ってない。


 このままではのたれ死にそうなので、とりあえず水場を探して歩き始めた。


 最初のうちは特に何も考えることもなく歩いていたが、急にあることに思い至り怖くなってきた。


 だって考えてみたらここが異世界かどうかなんて関係なく、山の中なんだから獣がいて当然だろう。


 鹿とかならまだ良いが猪や熊なんかと出くわしたらただの高校生の俺が叶うわけがない。


 ましてここが異世界ならゴブリンやオークなんかの魔物もいるかもしれない。


 何でこんな事に思い至らなかったのか。いくら突然の事に混乱していても安全確認を怠るなんて、自殺行為だぞ。


 何もなかったから良かったが今からは気を引き締めて行こう。


 それからは周囲をよく見ながら探索を続けた。山の中をそれも警戒しながら歩いたせいでペースは落ち、一時間近く歩いたがあまり進んだように思えない。


 気を張り詰めていたせいで疲れたので、休憩でもしようと思ったとき、少し離れたところに建物を見つけた。


 周囲を警戒しながらも、急いで近づくとそれは古びてボロボロになった神社だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る