彼女の腹筋が見たくて

味噌わさび

第1話

「はぁ~、暇だね~」


 彼女はそんなことを言いながら、俺の部屋で寝転んでいる。


 大学に入った俺に彼女ができて、三ヶ月が経った。自分でも信じられないが、こんな俺にも彼女ができたのである。


 付き合い始めた俺たちは、カップルがやりそうなことは一通りやった。無論「そういうこと」もである。


 俺は椅子に座りながら、床でゴロゴロしている彼女のことを見ている。


 スカートから見える足、そして、贅肉のない腹部……彼女は陸上サークルに所属しているらしい。かなりスマートだし……悪く言えば、もう少し肉付きが良くても良い気がするが。


「……ちょっと。今エッチな視線で私のこと見てたでしょ?」


 寝転びながら彼女は俺のことを叱る。


「うん。見た」


 俺は正直にそう言った。彼女は呆れた顔で俺を見る。


「あのねぇ……そういうことは一通りやったでしょ。それにアンタ、そういうことに積極的だったっけ?」


「いや。そんなに」


「じゃあ、こんな昼間から発情しないでよ。もう」


 そう言って彼女は俺から視線をそらす。ふと、俺は今一度彼女の身体を見てしまう。


 確かに俺はそういうことにそこまで積極的ではない。だけど……よく考えれてみれば、俺は彼女のことをよく見ていないのではないだろうか?


「なぁ。頼み事があるんだけど」


「ん? 何?」


「……腹筋、見せてくれない?」


 俺がそう言うと一瞬間があった後で、彼女は起き上がった。


「……え? な、何? 腹筋って……お腹?」


「うん。そうだけど」


「いや、何平気な顔しているのよ……。あのね、それ、普通に変態だからね?」


「駄目なのか?」


 俺がそう言うと彼女は少し困った顔をする。しかし、嫌そうな顔ではなかった。


「……あのね。別にアンタがそういうことに積極的になるのはいいんだけど……腹筋ねぇ」


「いいじゃないか。お互いすでに裸は見ているわけだし」


「なっ……! それは……そうだけど……」


 暫くの間、沈黙が俺と彼女の間に流れる。それから、ふと、彼女はシャツの裾を掴み、半脱ぎ状態になる。


 そこには、たしかに彼女の腹部……完全に贅肉のないきれいな腹部があった。そして、たしかに腹筋が見える。


 別にボディビルの選手のように割れているわけではないが、確かに腹筋だということがわかるくらいにキレイな筋肉だった。


「お、終わり!」


 そう言って彼女は腹部をシャツで隠した。


「うん。ありがとう」


 俺がお礼を言うと、彼女はとても恥ずかしそうだった。


「なんなのよ……。もう……」


 そう文句を言いながら、彼女はまた寝転んで俺に背中を向ける。


 ……なんというか、かなり良かった。


 今度は……どこの筋肉を見せてもらおうかな、などと、よからぬことを俺は考えてしまうのであった。

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