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「なんかよく分かんないねー」「先生の話し方の授業じゃーん」
「まあ、今日は最初の授業だからな。元々は教科書の確認と、適当なコミュニケーションに割り振った時間だ。
感想は色々あるだろうが、まあ私はこのような人間だと知ってもらえればそれで構わん。」
「じゃあ、自己紹介でもしますか?」
「あ、自分は野球部なんで早弁してても気にしないで下さい!」
「おい、その時はさっきみたいに投げるからちゃんと受けろよ?」
「え、それは無理」「おい」
弛緩してきた空気の中で、教師は生徒たちと他愛無い話をしている。
その声を曖昧に耳に入れながら先程までの話を反芻し、俺は思考の海に漂っていた。
この国の都合。勝者の歴史。
敗者の要望を聞く道理が無いと言えば、確かにそうなのかもしれないとは思う。
しかし、この先もこの国が勝者で在り続けるだろうか?
いつか戦争に敗れた時、自分たちの歴史はどうなるのだろうか?
勝った相手国にとって都合の良い歴史に、消されてしまうのだろうか?
うんうんと唸る俺に気づいた教師が、こちらに目を向けて話し掛ける。
今度は睨んでいない。穏やかな、少し扱いに困っているような顔だ。
「お前に言ったが、歴史も含め学問とは覚えるだけでは意味がない。
それを身につけ、知識として活かす事が肝要だ。
施策でいえば過去の失敗や成功例からその原因や過程は勿論、その判断に至った要素も重要だ。
戦争であれば、日夜競うように生まれる兵器や戦略は過去の戦争を分析し、より良い成果を挙げる為に求められるものだ。
どちらも、仮に今お前が決定を下せと言われても最適解など分からんだろう。
だから知識を身につけ、それを元にして複合的に扱い、より良いものを産み出す。
学問とは、その礎になるものだということは肝に命じておけ。いいな?」
面倒くさいと言った俺に諭すように語る。
その言葉にどう反応して良いか分からず、曖昧な笑みを浮かべながら、俺は短く返答した。
「はい、分かりました。」
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