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少し騒つく教室の空気を楽しんでから、教師は話を再開した。


「もう一度言うが、あくまで例題だ。全員に納得してもらうつもりは無い。

ああ、そういう人もいるんだな、という認識で構わん。」

「だが、先ほど言った歴史とはそういうものだ。

その事が起こった当時の考えなんか関係ない。結果として今この国にどう繋がっているか、だ。」


板書と並行しながら、多少の身振りも加えて語る。


「今でこそだが、国の大きな動きはその長たる者の一存では決まらん。

だが、そういった時は確かにあったのだよ。

群雄割拠の時代なんぞは、気づいたら村が亡くなった、昨日までの隣町が今日は敵対国、なんてザラだ。」

「そんな当時の者の考えなど掬い上げたらキリが無い。

だから事実が、この国にとっての歴史なのだよ。」

「これは先の授業で教えることだが、もっと小さい国だった頃には、今の国土に他の国があった。

だが、長い歴史の中でそれぞれが戦争や併吞を繰り返した結果、今の国になった。

謂わば勝者の国だ。

その目からすれば、負けた国の事情なんて関係ない。、ってことだ。」


そこまで続けて教師は一度肩を竦め、軽い調子で話を終わらせた。


「だから、この国で学ぶ歴史は多少の調整がされている。

まあ、スポーツでも勝った側と負けた側、同じ見方にはならないだろう?」

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