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「調整のされた歴史、ですか?」


問いかけに1つ頷き、さらに教師は少し声量を上げて続けていく。


「そう、あくまでもこの国から見た歴史だ。

例えばだが…うん、そうだな。

お前が道を歩いている。どんな歩き方かは知らん。どこを歩いているかも知らん。天気も服も靴も髪型も、適当にイメージしろ。

ああ、ついでにお前達もやってみろ。」


軽く周りを見回すようにして、更に続けていく。


「よし、イメージしたか?

では、鞄を持たせてみろ。どんな色でも形でも良い。」


「次は中身だ。

筆記用具、ノート、教科書。今日は体育の授業があるな。運動着も追加だ。」


「では、問おう。

今のイメージは姿?」


その言葉に反応して、何人かは驚いた顔でキョロキョロとした。

何割かは当然のようにしている。分かっていない顔もいる。


「まあ、あくまで例題だからな。

意味の分からん者もいるだろう。

だが敢えて区切りをつけるのなら」


そう言いながら、教師は教壇へ戻り板書をしていく。


「最初にそれぞれのイメージで共通した点は、服を着ていることぐらいだろう。

しかし、髪や靴はもちろん、どんな服か、場所か、何も指定はしなかった。

全く同じものを想像した者はおらんだろう。」

「ああ、服を着ていなかったという主張は要らん。

ごく少数だが、たまにはいる程度だ。」


硬かった空気に、教師は軽い笑いを入れて尚も続ける。

時折りぼそぼそと話し合う声が聞こえる。


「では、鞄を持つとどうだ?

差は有るだろうが、全員が共通して鞄を持った。」

「更に中身を入れたな。

小さ過ぎて入らなかった者もいただろうな。

先に形を指定しなかったのだから。」


まばらな頷きを返されながら、教師は軽く息を吸った。


「では。

と聞いた瞬間、それまでのイメージと大きく変わった者はいるか?」




周りを見回す者が、割り合い多く感じた。

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