2
「調整のされた歴史、ですか?」
問いかけに1つ頷き、さらに教師は少し声量を上げて続けていく。
「そう、あくまでもこの国から見た歴史だ。
例えばだが…うん、そうだな。
お前が道を歩いている。どんな歩き方かは知らん。どこを歩いているかも知らん。天気も服も靴も髪型も、適当にイメージしろ。
ああ、ついでにお前達もやってみろ。」
軽く周りを見回すようにして、更に続けていく。
「よし、イメージしたか?
では、鞄を持たせてみろ。どんな色でも形でも良い。」
「次は中身だ。
筆記用具、ノート、教科書。今日は体育の授業があるな。運動着も追加だ。」
「では、問おう。
今のイメージはこの学校に来る姿になっていないか?」
その言葉に反応して、何人かは驚いた顔でキョロキョロとした。
何割かは当然のようにしている。分かっていない顔もいる。
「まあ、あくまで例題だからな。
意味の分からん者もいるだろう。
だが敢えて区切りをつけるのなら」
そう言いながら、教師は教壇へ戻り板書をしていく。
「最初にそれぞれのイメージで共通した点は、服を着ていることぐらいだろう。
しかし、髪や靴はもちろん、どんな服か、場所か、何も指定はしなかった。
全く同じものを想像した者はおらんだろう。」
「ああ、服を着ていなかったという主張は要らん。
ごく少数だが、たまにはいる程度だ。」
硬かった空気に、教師は軽い笑いを入れて尚も続ける。
時折りぼそぼそと話し合う声が聞こえる。
「では、鞄を持つとどうだ?
差は有るだろうが、全員が共通して鞄を持った。」
「更に中身を入れたな。
小さ過ぎて入らなかった者もいただろうな。
先に形を指定しなかったのだから。」
まばらな頷きを返されながら、教師は軽く息を吸った。
「では。
学校と聞いた瞬間、それまでのイメージと大きく変わった者はいるか?」
周りを見回す者が、割り合い多く感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます