サイコロの7

虎間

選ばれてしまった者

 サイコロの”7”の目を知っているだろうか?


 通常1~6の目しか存在しないサイコロの目には、知られざる7番目の目がある。

 もちろん、一般的な六面サイコロにおいての話であり、それ以外の多面体サイコロでは、7の目はただの7に過ぎない。


 1/6という確率の原則を破り極希に現れるこの奇妙な数字は、振り出した者の運命をねじ曲げ、招かれざる者を呼び寄せる。


 そんな数奇な数字に、選ばれた少年が一人。


 彼は、二人の友人と共に自室でボードゲームに興じている。まだゲームに慣れていない三人は、何度もつまずきながらも和気藹々とゲームを進行する。


 やがて何回目かの彼の番となり、サイコロを手に取り、投げるポーズをとる。


「よし、いくぞ・・・・・・そりゃっ!」


 彼は握りしめたサイコロを力いっぱい投げ、飛び出したサイコロはテーブルの上を勢いよく転がる。

 2、5、6、1・・・・・・と、人の目には見えない速さで数字は回転し続け、コロコロと前へと進み続ける。


 そして――――勢い余ったサイコロは、テーブルから転がり落ちてしまった。


「何やってんだよ」

「力入れすぎだろ」


「わかってるよ、もう一回だ」


 友人たちのヤジを浴びながら、サイコロを拾い上げ、彼はもう一度それを握りしめる。

 今度は力を入れ過ぎず、しかしいい目が出るようにと気合いを込めて。


「そおりゃぁ!」


 威勢のいい声とは裏腹につつましく転がり出たサイコロは、今度はテーブルの上にてその目をあらわにした。


「・・・・・・”7”??」


 本来あり得ざる数字を前に、彼は戸惑い気味につぶやいた。


「何言ってんだよ」

「あきらめ悪すぎだろ」


 嘘か冗談としか思えないような彼の発言に、友人たちは笑い、彼を小突く。


「ホントなんだって! 見てみろよ!」


 友人たちは笑いながら、彼の指さすサイコロをのぞき込む。




 ――時は来た。


 ”私” は、困惑している彼の肩の上へ、そっと手を置いた。

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サイコロの7 虎間 @torama110

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