第11話
そこには
田月 花 16歳
4月28日出生
12月29日永眠
顔写真付きの書類だった。
「舛花にこの世界の話をした時に少し離れた島に行ってきた。この世界に来た人は全員行く島だ。そこで舛花の名前を登録して同時に生前謄本を貰ってきたんだ。
大切になるだろうと思ってな。
そして今日は舛花の誕生日だ。おめでとう。」
真っ白の花束。チューリップとスズラン。とてもいい香りがする。
「舛花が白い格好をしてたからてっきりバレてるのかと思って冷や冷やしていた。」
そう笑う。
私は大粒の涙が手に落ちていた。ありがとうございます。その言葉を出すのが精一杯。私を撫でる彼の手が私の頬を撫でる。瞬間何かを思い出せそうな気がした。
「誕生日おめでとう。舛花。」
「ありがとう…ございます。」
「それから、これ。」
小さな箱に入っていたのは雫のような形のイヤリング。小さなラメが入っていて動かすたびに反射でキラキラしている。
「プレゼント。」
「作ったんですか?刻印が入っていない。」
自分でなんでも作れる世界ではオーダーメイド、世界に一つというのが売りになる。その為に製作者は刻印をする。
「あぁ。仕上げに…」
そう言い彼はイヤリングに触れた。下の方にアルファベットが浮かび上がる。『S.H』
「S.H…って」
「たまたま思いついた単語。シャーロックホームズ?かっこよく刻印出来た。」
舛花、縹、意識してしまうのは私の考え過ぎ?
帰りの車で永遠に考えてしまっていた。
家に着いてすぐに花を花瓶に生けた。部屋に飾り改めて私の書類に目を通す。
通っていた学校や、住んでいた場所。見てもわからないようなことばかり。
田月 花。
シンプルな名前だ。今の名前にも花が付く。
そこで思考が止まる。
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