第10話


冬はあっという間に終わり桜が舞う春が訪れる。学年はモモと共に上がり2年生になった。特に変わったことも無く平和だ。


「化粧してるのか?」

「?はい。モモに教えてもらって最近してるんです。」


口紅にアイシャドウ。キラキラしたラメも全て可愛い。こういうのを見てる瞬間がすごく幸せ。目を閉じて瞼を見せ、どうですか?と聞くと縹さんの笑い声が聞こえた。


「馬鹿にしてます?」

「いや、可愛いよ。似合ってる。」


そんな甘い言葉に私の気持ちは天に昇る。


「今日迎えに行く。」

「え?学校にですか?」

「あぁ。夕飯を食べに行く。」

「わかりました。」


急にどうしたんだろう。驚きはしたが、予定が嬉しくて頬が緩んだ。いつもより大きめの鞄に着替えを持って家を出た。

授業もいつもより頑張れる。最近人並みに魔法が使えるようになってきた。料理や服を作ったりもできるようになったが料理は手で、服は茉莉さんのところで買うようにしていた。私がそうしたいと思うから。


授業が終わり着替えを済ませる。モモに手伝ってもらいメイクやヘアセットをする。


「張り切り過ぎ?」

「ううん。可愛い。モデルさんみたい。」


ローファーは脱ぎ、初めて自分で作ったパールがたくさんついた白いピンヒールを履いた。白いロングワンピースに合わせた。まるでこの日の為に作ったみたいで少し恥ずかしい。


モモと別れて校門に向かうと車が止まっていた。


「やっぱり。ワンピース着てる気がした。」

「車持ってたんですか?」

「買った。流石にプロしか作れないからな。」

「買ったって…」


そんなさらっと車を買うなんて。デザインは大正時代に走っていたようなレトロなデザイン。おしゃれでおもちゃみたいと思ってしまう。


「ほら。乗って。」


扉を開けてエスコートしてくれる。どきどきと心臓が音を立てる。


「白いからウエディングドレスみたいだな。」

「…は、縹さんはタキシード着ないんですか?」

「タキシード代わり。」


スーツのネクタイを指差す。期待をしてしまうような言葉をつらつらと並べる。私は簡単に喜んでしまう。彼の何気ない言葉に私は好きに振り回されている。


そして到着したのは大きなレストラン。高級な雰囲気に慣れず緊張していると縹さんが手を引いてくれる。お姫様のような気分だ。


「景色、綺麗。」

「高い位置にあるからな。舛花がいた島も見える。」

「だからここに?」


さぁ?と意地悪な笑顔。気遣いに胸がまた締め付けられる。

おしゃれなコース料理を食べゆっくりとしていると縹さんが席を立った。そしてすぐに戻ってきた。大きな花束を抱えて。縹さんはまず私に書類を渡した。

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