第7話

「用があって部屋に行ったがいなくて焦った。」


細い声でそう言う。そうか、あれから寝てしまっていたのか。なんてぼーっと考えていたが抱きしめられているという現実が思考に追いついてきて全身が熱くなる。


「し、心配かけてしまってごめんなさい!」


急いで距離をとる。私がいないと気づいた縹さんはネックレスで位置がわかったらしい。このネックレスには縹さんの魔法がかかっている。


「眠れなくて、散歩していたらここで眠ってしまっていて。」

「夜の気温は気持ちいいからな。ただ、いくら安全な世界と言っても犯罪者だったやつもいるんだ。気を緩めすぎるな。」


言葉は叱っていても表情は優しかった。夢のことなんてその時は忘れてしまっていた。


あれからよく制服を着る夢をみる。そしてそのうち学校に行く夢をみるようになった。私はあくまで男子生徒。女の子に呼び出され告白される夢も見た。


いや、薄々気が付いてはいる。


夢ではないのだろう。


「舛花。学校に行ってみるか?」


なんの前触れもなくそう言われた。確かにこの街にも大きな学校がある。どうやら年齢で学年を分けるのではなく事前にテストを受けて学年が決まるそうだ。

興味もあったのでその場で行くことを決めた。


「なら、制服を買いに行くか。」


生前の記憶もあって少し気負いしてしまう。しかし縹さんがお店で様々な種類がある制服を一緒に選んでくれる姿を見て前向きになれる。


水浅葱学園。

基本的な制服の型はあるがお店によってアレンジされていたり、自身で変える人もいるらしい。そして縹さんが選んでくれたのは暗めの青のタイトタイプのスカート、そして可愛らしいデザインの襟のブラウス。ブレザーも同じ青く袖元が折り返しで上品な生地が使われている。靴も同じ青いローファー。


「俺も通っていたから、わからないことがあれば聞いてくれ。」

「はい。ありがとうございます。」


本当に可愛い。憧れが叶った。そんな気持ちで満たされる。秋入学の為、編入という形になるそうだ。



「忘れ物ないか?」

「はい。行ってきます。」


枯れ葉がひらひらと落ちる中私は歩き出した。しかし急に腕を掴まれた。後ろを振り向くと縹さんが私の髪の毛に触れた。淡い光と共に暗い青い髪の毛が胸元まで伸び始めた。何も言わずに縹さんを見上げるとくしゃっとした笑顔で入学おめでとうと言ってくれた。


学校に向かっている途中涙が込み上がり、止まることがなかった。


「舛花です。わからないことだらけですがよろしくお願いします。」


なんとか涙を止めて、教室に案内してもらう。クラスを見て解ってはいたが驚いた。様々な髪色や肌色、そして中学生くらいの子もいれば大学生くらいの人もいる。流石に小さい子供は別棟の学校に行くらしい。ういもそこにいる。


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