第5話
「俺はこれから仕事に行くから好きに観光するといい。」
そして私の首に腕を回すとネックレスをつけた。白い宝石が着いた綺麗なものだ。
「これで俺は舛花の居場所がわかる。仕事が終わったら迎えに行く。」
頭を撫でられる。本当にこの人は無自覚でこんなことをしているのだろうか。私は小さく頷き彼と別れた。
商店街に向かうとさらにカラフルだった。家具や服や靴、アクセサリー普通の商店街なのにカラフルで作品を見ているよう。さらに歩くと大きな広場に出た。ベンチに座ってカラフルな世界に浸っていると隣に男の人が座った。
「黒いワンピース。素敵だね。」
「ありがとうございます。」
「この街の人じゃないね。どこからきたの?」
「浅葱街から。」
彼は金色の髪に金色の瞳と端正な顔立ち。外国の人のような見た目だ。
「少し遠いね。一度だけ行ったことがあるよ。そのワンピースもそこで作られたものだ。綺麗だね。
あ、僕はノース。君は?」
「舛花です。よろしく。」
握手をして、また会話を始めた。面白い人で時間を忘れて話していると急に身体が後ろに傾いた。知っている香り。
「おっと、ボーイフレンドがいたんだ。」
「縹さん?!」
「ノースお前なんで舛花といる?」
「彼女といれば君と会えると思ったんだ。」
不穏な空気に心配になったのも束の間ノースは縹さんにハグをした。
「久しぶりだね。会いたかったよ。莉玖。」
「くっつき過ぎだ。」
そして離れて彼らはこちらを見た。
「ノースは俺の友人だ。生前前からの。」
「僕が莉玖の後を追いかけたんだ。」
「2人は生前の記憶があるんですね。」
「忘れてたんだけど、今日莉玖を見て思い出したんだ。」
「俺は覚えてた。けどここで会うとは思ってなかった。」
縹さんの方を見ると涙を流している。そうか。ここは死者の町だ。みんな一度死んでいる。
「ノース。お前なんで…」
「泣かないで。また会えて本当に嬉しい。」
「…舛花。なんで泣いてる?」
そう言われて気がついた。頬が濡れている。何故だろう。何故か、なにか思い出したのだろうか。
「縹さん。」
止まらない涙を彼は優しく拭ってくれる。そしてそのまま抱きしめてくれた。
「もう!なんか僕とのハグより優しいよ!」
ノースの一言に2人で笑ってしまう。
しばらく3人で話していると夕方になってしまった。ノースの提案で彼の家に行くことにした。
黄色い家で家の中も絵で溢れている。
「ノースはハーフで学校が一緒だった。」
他愛もない話。その時間がとても楽しかった。それから縹さんが仕事の日はノースと過ごして1週間の遠征は終了した。
家に帰ると疲れたのか縹さんはソファで寝てしまっていた。相変わらず美しい顔立ち。そしてどこか懐かしい。あれから毎日夢をみる。女の人が何度も愛してると言い、頭を撫でる。安心感も幸福感も感じない。ただただ苦しい夢だ。こんなに愛を貰っているのに変だ。
「…は……な…」
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