第2話
「迷子?」
突然声が聞こえて驚くと足元に男の子が立っていた。赤い髪の毛に赤い瞳。甚平のようなものを着ている。
「そうだね。気がついたらここにいた。」
「近くに萌葱街があるから行こうよ。」
小さい手は温かく、少し懐かしい気持ちになる。なぜ懐かしいかはわからない。
歩いていると大きな島が見えてきた。
「君の街?」
「うん!僕はうい。お姉ちゃんの名前は?」
「何も覚えてないんだ。名前もない。」
「僕の師匠のところにいこ!きっと助けてくれるよ!」
街は沢山の人で賑わっている。着物や洋服。服装も髪の毛も肌の色も様々。同じなのはみんな笑っているところ。手を繋いで歩いているとういは途切れることなく話しかけられていた。
「うい!野菜食べてるかー?」
「ういちゃん新しい服できたから取りにおいで〜!」
この子の人柄が知れて、なんだか胸が暖かくなる。
「僕も迷子だったんだ〜。」
「そうだったんだ。こうやって歩いてこの街に来たの?」
「師匠が拾ってくれてここまで連れてきてくれたんだって!あ!いた!師匠〜!!」
パッと手を離して走り出したうい。その先には銀から青のグラデーションの短髪、映画に出てきそうな騎士の格好をしている大きな男の人がいた。2人のところへ歩いて行くと師匠と呼ばれる人と目が合う。
「このお姉ちゃん名前もなくて…僕と一緒!それに師匠の髪色と一緒だったから連れてきたんです!」
「うい。俺は何でも屋じゃないぞ。」
「だめですか?」
「…はぁ。もうすぐ日が沈む。泊まっていけ。」
男がそういうとういはパッと笑顔を浮かべて再び手を繋いでくれた。商店街のようなところを抜けると川が流れる静かな住宅街になる。街全体は洋風な建物で統一されている。そして住宅街の外れに大きな一軒家が見えてきた。
「ここが師匠の家!」
大きな門に庭も広い。男は何者なのだろうか。
「入れ。」
「ありがとうございます。」
案内された部屋はシンプルだが綺麗にしてある。窓からは歩いてきた道がよく見える。
「話を聞かせろ。」
いつのまにかういはいなくなり男が椅子に腰を掛けていた。簡単に目が覚めてからの話をすると表情ひとつ変えずそうかと呟いた。
「俺は縹 莉玖。街の護衛をしている。貿易や街の取り締まり、警察みたいなものだ。」
「ういと一緒に住んでるんですか?」
「最近までここに住んでたが養子に迎えたいという夫婦に引き取られた。頻繁にここに来るがな。」
やっと笑った。寂しそうな笑顔だった。
その日は食事とお風呂を用意してくれて深い眠りについた。
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