141.ミゼリコルデへの対処法
「――で、共闘提案は呑んでくれるってことでいいんだな?」
提示されたステータスの確認を終えたのを見計らって、彼はセナに共闘する意志を問う。
ミゼリコルデを斃すために戦うのであれば、この提案を拒否する理由は無い。
彼の力量は身を以て理解しているし、自分の実力と合わせて考えれば、共闘するに足るプレイヤーだ。
狩人として相手を狩るセナ。
戦士として相手を斃すキルゼルオール。
方向性が違うからこそ、お互いの足りない部分を補える。
「……協力は、する。負けっぱなしは癪だし」
セナは負けず嫌いだ。
勝てないと判断すれば逃げるし、立ち向かおうとはしないが、戦わざるを得ない状況で負けるのは癪に障る。
どうせなら戦うのなら勝ちたい。それに、勝てる相手にだけ挑むのは、自身の成長に繋がらない。
「んじゃ、さっそく作戦会議だな。俺らの場合、柔軟性を持たせつつ臨機応変にが最適だと思うが、お互いの手札ぐらいは知っておかねぇと」
彼の言うことは尤もだ。お互いの手札を知らなければ共闘なんて出来ない。
しかし切り札を含め全て晒すのは……と考えていると、彼は自分の手札について次々と説明し始めた。
加護の効果、ジョブ専用アーツの詳細、スキルの内容と適用範囲、アーツの使い方。
ステータスへの補正はさほど高くなく、PS……プレイヤースキルで補なわければならない癖のある構築だが、それはセナにも言えること。
セナが相手を徹底的に追い詰めて狩り殺すことを念頭に置いた構築とすると、彼の構築は力こそ
「――つまり、武器破壊を代償に火力で押し切るのが俺だな。《クリエイト・サーヴァント》」
説明の最後に、彼は準備の一環としてアーツを発動する。
ポイントで交換したと思わしき武器の数々が消えて、代わりに人型の物体が出現した。
それは無機質な質感のド-ルであり、顔はあるが表情は動かない。剣を束ねたような衣装は刺々しく、触れただけで怪我をしそうなぐらいだ。
「……っ」
「警戒しなくていいぜ。こいつの名称は『剣の従者』。エクスマキナの下位互換だが、耐久面に性能を割り振ってあるからミゼリコルデの銃撃にも耐えられる」
彼が使用した《クリエイト・サーヴァント》は、その名の通り従者となる存在を造り出すアーツだ。消費した武器が剣なので『剣の従者』となっているが、性能に関係があるわけでは無い。名前と見た目が変わるだけである。
この従者は作成する際に性能を攻撃、防御、特殊の三種類のどれかに偏らせることが可能であり、極振りにすれば格上の攻撃でも防げるようになる。
ただし、素材とする武器の数とレア度によって性能は上下するし、HPやMPの回復が出来ない使い捨ての従者だ。
「代わりに時間制限も無い、壊れるまで命令に忠実な人形ってわけだ」
本物の構築魔法とは違い、彼のは【構築魔法:偽】である。そもそも意思ある人形を作ることは出来ない。
なので彼は、火力特化の自分を守る盾として運用しているのだ。
「……じゃあ、私のも」
ここまで丁寧に説明されて、はいさよならというわけにもいかないので、セナも自分のステータスを開示する。
さすがに詳細までは話さないが、名称からある程度を察するだけの知識はあるようで、「なるほどな……」と頷いていた。
「ミゼリコルデ相手だと……レギオンだけ、です。他のはあんまり強くないし」
「だろうな。バフは欲しいが、動けないんじゃいい的だ。控えでいいと思うぜ」
囮や目眩まし代わりの自爆要員として兎たちを運用することはできるが、DPSには期待できない。
セナとレギオン、そしてキルゼムオール。ミゼリコルデに攻撃を加えるのはこの三人となるだろう。
「――あとは場所だな」
お互いの手札を開示し、作戦も決まったところで、場所の選定に移る。
「あいつ相手に閉所は不利だ。ましてや通路なんて、殺してくださいって言うようなもんだからな。だから、なるべく広い場所に誘い込む必要がある」
二人のマップを統合して条件を満たす空間を探す。理想は走り回っても困らない程度。遮蔽物があればなおよし。
だが、今回のイベントの舞台であるこの迷宮は典型的な、通路と小部屋の組み合わせである。
小一時間ほどマップと睨めっこして、そこそこ広い空間に妥協した。
「よし、んじゃあ行くか。現地で戦ってる奴らがいればトレインして巻き込む――いや、ミゼリコルデが勝手に処理するか。あと、MPポーションあれば融通して欲しいが、あるか?」
「……一〇個までなら」
「うし……って、効果高いな」
自分でも使うので渡すのは一〇個に留めておく。マーケットで流通しているポーションより効果が高いので、セナは代金として五〇万ほど貰った。
道中の雑魚は兎爆弾とレギオンに処理させることでMPの温存に努める。
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