137.迷宮攻略
「《サプライズダガー》」
迷宮攻略が始まって半日。
遭遇する敵性存在はモンスターばかりであり、どれも簡単に斃せる程度の強さだった。
たまに見たこと無いモンスターが混じっているが、《狩人の第六感》が格下だと判定するので、やはり簡単に斃せてしまう。
それでも一応、何かしらのスキルで攻撃を防がれる可能性を考慮し、《詠唱補正》が乗るようにアーツ名を宣言している。
「……レギオン、近くに敵はいる?」
「いないよ」
「じゃあ開けるね」
今しがた斃したサーベルタイガーが守っていた宝箱を開けるセナ。
この迷宮内には五種類の宝箱が存在しており、そこから入手したアイテムのレア度や量に応じてポイントが加算されていく。
下から木、鉄、銅、銀、金の順番になっていて、上の宝箱ほど旨みが大きい。セナが開封したのは銅の宝箱だ。
「これは、時計かな?」
中に入っていたのは普通の懐中時計で、実用品というよりは美術品としての価値があるように見える。加算されたポイントは八〇〇〇程度。
この第三回公式イベントでは様々な方法でポイントを集める必要がある。
敵性存在であるモンスターを斃したり、宝箱を開封したり、あるいは特定地点から採取したりだ。
少し複雑なルールだが前々回とは違い、だいたいのアイテムは宝箱から入手するしかない。そしてポイントも宝箱から回収するのが一番効率がいい。
集めたイベントポイントはランキングに反映されるほか、脱出に成功した者のみ特別なアイテムと交換できる。
そして、宝箱から不要なアイテムを入手した場合、セーフゾーンでポイントに還元することが可能だ。
更に、セーフゾーンではポイントを消費することで、ポーション等の消耗品や生産に必要な素材を入手できる。この方法で得たアイテムは迷宮内でしか使用できず、イベントが終われば消滅するため、手元のアイテムを節約するのに役立つだろう。
ランキングに反映されるポイントは累計獲得量なので、どれだけポイントを消費したとしても安心だ。
ただし、脱出後にアイテムと交換するためには最低でも一〇万は確保しておかなければならない。
脱出後を見据えて温存するか、攻略のために浪費するか。
どちらにせよデスペナルティにポイント半減が追加されているため、慎重な立ち回りを求められる。
「還元っと」
近くのセーフゾーンで懐中時計を還元し、セナは現在のランキングを確認する。
累計獲得量は大凡四〇万。この辺り一帯を制圧したお陰で首位となっているが、見覚えのある名前がすぐ下に連なっているので油断は出来ない。
キルゼムオール、累計獲得量三四万。
ホルン、累計獲得量二七万。
剣士ああああ、累計獲得量二五万。
他にも二〇万に到達しているプレイヤーは何人もおり、ランキング下位でも数万は確保している。トップから数えて一万人しか表示されないとはいえ、それでも悠長に構えてはいられない。
「この辺りは探索し尽くしたし、こっちの方に移動しよう。たしか、未探索の道があったよね?」
「うん、レギオンが見つけた。レギオンが待機しているから迷わない」
探索の要はレギオンだ。ダンジョンを周回したことで大量の完全遺骸を捕食したレギオンは、以前よりも群れの総量が増えている。
未探索の道に目印として小さなレギオンを配置し、少しずつ制圧していく。マッピングも並行して行うが、それはプレイヤーであるセナしか確認できないし、宝箱やモンスターまでは記載されない。
確実な制圧とポイントの回収のためにも、隠し部屋までも探索できるレギオンは必須なのだ。
「……《ステルスハント》」
セナは安置となっている部屋から出て移動を開始する。
姿を隠せる《ステルス》は《ステルスハント》へと進化したことで、透明化の継続時間は非戦闘状態で三〇分、戦闘状態でも一〇分は継続するようになった。
そこにジジから教わった歩法を駆使すれば、音すら立てない狩人となる。
「(他の人と全然会わないし、数十倍……数百倍はあるのかなこの迷宮。数万人はいるはずなんだけど)」
まさか、自分が提案した案が採用されてプレイヤーが蹂躙されているとは思ってもいないセナ。
安置を見つける前に斃されたプレイヤーはランダムな位置でリスポーンし、全ステータス半減および所持ポイント半減というデスペナルティが課される。
殆どのプレイヤーはパーティーを組んでイベントに臨んだが、その半数は序盤でデスペナルティを負っている。
そのため活動範囲を上手く広げられず、上手く立ち回っている他プレイヤーと出会いにくくなっているのだ。
もちろんセナはそんな他プレイヤーの事情なんて知らない。
敵性存在であるモンスターを殲滅しつつ探索範囲を広げ、順調に宝箱からポイントを回収していった。
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